王都シリーズ 服装資料
タンジェス=ラント(士官学校制服)
詰襟の上着、大腿部にやや余裕のある細袴を長靴にたくし込むという形状は、王国の一般的な騎士の軍装を模したもの。乗馬服から発展したものだとされている。特徴は上下で色が異なること。正規の騎士であれば上下で色合いを統一するのが通例であり、そうではない学生であるとの身分を示している。
材質はやや厚手の綿製。そのままの姿で戦闘に耐えうることが前提とされており、動きやすさと耐久性に主眼を置いた作りとなっている。同様の体裁であれば絹、麻などその他の生地を使うことも認められているが、その場合費用は自弁となる。
長靴は革製。これも服と同じくごく実用的な頑丈なもの。拍車とその取付金具が付属しており、履いたままで乗馬靴とすることができる。
一般の学生であればこれに官給品の長剣が加わる。タンジェスも『猫狩始末記』の際にはそれを用いていたが、『人形騒乱録』以後はより高級なものに変えている。本来騎士の武装は自弁が原則であり、官給は学生ゆえの例外措置であるため、このように私物を用いることは特に規則違反に当たらない。だらしなく着崩す、あるいは身分不相応に華美なものを用いなければ問題ない、というのが暗黙の了解である。なお、この剣は何故か所有者以外の人間によって使われることが多く、タンジェス自身は今の所一度も名品だというその切れ味を試したことがない。
剣帯は長靴と同様の革製。タンジェスのものは一貫して官給品である。
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ティア=エルン(施療院の神官長衣)
半袖、膝丈の袴の上から長衣と前掛けを羽織っている。女性神官の場合正式にはスカートなのだが、施療院では活動的な作業を必要とするため、重要な祭礼の場合を除いて袴を用いる。逆に略装として長衣を省いた形式もあり、同僚はそれで済ませている人間が多いのだが、ティアは自分の趣味で長衣をまとっている。基本的にゆったりとした衣装が好みである。
日常で使っているものの材質は綿。『人形騒乱録』の結婚式で用いていたものは絹製。
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ストリアス=ハーミス(私服)
薄手で丸首のセーターに、外出用として上着を羽織っている。下はごく特徴のないズボン。
基本的に体を締め付けるような衣類が嫌いなため、細身にもかかわらずどれも敢えて通常の大きさのものを買って、だぶついた着方をしている。正確な原因は不明だが、このような服装の趣味は古代の魔術師にも概して見られる傾向であるとされる。
それ以外に関しては特にこだわりがない。というより無頓着。強いて言うなら派手なものは気後れする、という程度。改まった場に出る、あるいは接客をするにしてはややくだけた服装だが、雇い主であるファルラスからは特段注意がない。背丈が近く、またその趣味が似通っているせいか、彼から服を借りて着ていることもある。
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マーシェ=クラブレン(士官学校制服らしきもの)
体裁はタンジェスのものと同様の士官学校制服で、材質も同じだが、実は特注品である。
規格品には男性用しか用意されておらず、それでは彼女の体形と全く合致しない。一方既存の女性服向けの裁断を流用すると、その他学生のものとはかけ離れた仕上がりになる。このためほぼ完全に新しい仕立で作られており、かかった費用はかなりの額に上っている。
長剣は、実家に代々伝わり、何人もの敵を倒したとされるものを使っている。現に使用された痕跡の明らかな品だが、その来歴については疑問の余地が残る。これは一般的な鋼鉄製であり、そこまで長期間に渡って実戦で破壊されずに残る可能性がごく少ないため。以前は疑いなく家伝を信じていたマーシェ自身、あまりに簡単に持ち出したため今ではやや疑ってかかっている。
その他剣帯や長靴などの小物類も私物で、官給品は予備として保管している。
総論
大陸の中央部、内海に面した平野に位置する王都の気候は比較的温暖。農業地域としての環境にも恵まれているため、服地の素材としは綿、麻、絹などの植物を原料とした、あるいはそれに類するものが一般的である。皮革は靴など、特に強度を要するものにのみ使われることが多い。無論北方の寒冷地においては、毛皮などが用いられている。
一方数量は極めて限られているが、魔術を用いた特殊な素材も存在する。古代全盛期の遺産の他、魔術研鑽所による試作品などである。いずれにせよ通常ではありえない強度や柔軟性を有しているため、市場価値は極めて高い。
また、南方からの輸入品になるが、ゴム製品も一部で用いられている。原料は天然ゴム。古代の魔術師によって製法が確立されたものであるが、原料となる樹の栽培や精製には別段魔力を必要としないため、南方諸国においては特産品の一つとなっている。