そらのやま「旅行記」Yukito Shimizu

旅行記2『オーストラリアに咲く花は』
10.町を歩けば 3

 ホテルから近いところの通りで、「ノミの市」をやっていた。最初の日からそれは知っていたのだが、1日の予定が済んで帰るともう店じまいの時刻で、ゆっくり見ることができなかった。このノミの市は夕方五時までで、回りの飲み屋は騒いでいても、市そのものはきちんとしまう。ちなみに、付近の商店街は六時までである。海外旅行者目当てなのか工芸品、美術品などが多い。数十軒の店が百メートルくらいにわたって開店している。道路に面した飲み屋から、歌い騒ぐ声が、このノミの市のバックミュージックになっている。彼女はここで「私が作りました」と言うおじさんから金のユーカリのブローチを買った。私は、子ども向けの絵本を見つけてそれを買った。こんな雑踏の中でのひとときは、どこの国にもある風景で、すっぽりとその中に入っていける。

 予想していた以上にこの町には日本人が多い。観光客が多いのは予想した通りだが、観光業等の従事者が多い。また、ヨーロッパと違うところは日本人観光客を直接対象にした店が多い。「日本屋」「壹番館」という名前のコンビニもある。日本からの食品持ち込みは禁止だが、関税が加わって高額になった日本インスタント食品を購入するのに不便はない。

 寿司屋もホテルの近くにあった。寿司は食べなかったが、日本食はかなり高くつく。ビールも好みはあろうがオーストラリアものにした方がいい。この寿司屋で、日本から来ている婦人と一緒になった。息子がこちらに来ていまして、と言う。この寿司屋の板さんは鳥取県の三朝から来ていると聞いた。昨年訪れたフランス・パリの日本食堂でも、岡山出身の板さんがいたから、私たちに近い人たちが、世界各地に広がっている。