そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.102 文化の日に 

 
 11月3日は文化の日。3連休であるが,とりあえず近場の文化を楽しむことにした。 
 まず青谷町の上寺知遺跡で発掘された弥生人の脳。この遺跡の発掘については新聞・テレビで報道され大体のことは知っていたし,それに関った人からの話も聞いていた。また,去年は5年生の社会見学の引率で展示してある施設を訪れたのだが,「脳」は「精密検査」のためここにはなかった。(このときはレプリカしか見られなかった)

 この度国民文化祭の一つの目玉商品として青谷町に持ちかえり,展示したのだった。
 10月中旬のオープニングには皇太子ご夫妻も訪問され,たいへんな賑わいだったようだが,大きなイベントも終わって静かな中で見ることができた。と言っても,大阪からの観光バスも来ていて,昨年の社会見学とは違った状況になっていた。

 今から二千年も前の弥生人の脳,といってもピンと来ない。ちっぽけな黒っぽい塊である。そこにどんな知恵が詰まっていたのか,知る由もない。
 しかし,さまざまな道具から想像される生活の様子を考えてみると,なんだか人間のやっていることって,この数千年あんまり変わっていないのではないかと思うのだ。このことは,イタリアのポンペイでも,ギリシアの数々の遺跡でも感じていたことだった。
 めざましい科学の進歩の中で,人間は生物お互いの間で生きていくことより,自らの滅亡を選択してしまうのかもしれない。そんなことを思った。

 今年は山陰鉄道発祥百年なのだそうだ。それを記念してSLが27年ぶりに山陰線を走るというので,昼食を早く済ませて近くの踏切まで見に行った。
 高校生時代の通学はもちろん,教員になってもしばらくこれで通勤した。C56の機関車に引かれた5両編成の記念列車は,「ボウボウ」と派手にサービスの汽笛を鳴らして,煙を上げながら通過していった。写真をやっと2枚撮った。

 同じ日,第22回気高町同和問題研究集会が,町中央公民館であった。
 事例発表を少し聞いて,「心の歌」トークコンサートを鑑賞した。出演者は野田淳子さん。私はこれまで名前を聞いたことのない歌手だったが,歌手生活32年という。
 歌は,「赤とんぼ」(三木露風),「わたしと小鳥とすずと」(金子みすず),「大きな古時計」(Henry Clay Work),「さくら」(しみずてるこ),「千羽鶴」(野田淳子)など,命をテーマにしたもの,心にしみいるものが多く好感が持てた。「大きな歌」の作者中島光一さんが彼女の夫だということも初めて知ったことであった。
 弥生人の脳を見ながら感じた不安が少し和らいだ。(2002.11.4)