そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.107 教科書の山 

 
 今教科書の山の中にいる。
 11月に入って,「図書の整理をお願いできませんか。」と県教育センター(旧県教育研修センター)から頼まれた。暇がないわけじゃあないし,図書館のようなところで仕事をするのも嫌いではない。『海辺のカフカ』のカフカ君のように図書館で本と向き合って過ごす時間が持てればいいかもしれない,と承諾することにした。

 週3日以内3月までというのはよかったが,所内の図書を見てちょっとうんざり。何しろ教育研修の拠点であるから教科書が山ほどあるのだ。小学校,中学校,高等学校,養護学校の教科書各出版社のものが30年分,いや,それ以上にある。
 図書室の書架にあるものも数千冊だろうが,それはかなり古いもので,新しいものは「教科書センター」という部屋を作って置いてあった。まだほかに2部屋に分けておいてあるのを見せてもらう。

「教科書以外の書籍,県内外の研究誌,研究物を含めて,どこにどのように配架し,閲覧できるようにすればよいか,学校支援の図書室の構想を立ててみてください。」「図書の移動などには全員で当たります。」
 でも,どれだけのスペースが必要なのか,これだけ膨大な資料となると想像がつかない。いい加減な構想で進むと,とんでもない森に足を踏み入れてしまうかもしれない。いやいやまたカフカ君になってしまった。

 構想は構想として進めるとして,実際目に見えるものがないと確かなものにならないだろうと,教科書センターから手をつけることにする。ここには昭和末期から現在使用の教科書がすべて置いてある。
 最新の教科書が,部屋に入ったとき目に入るようにしようとするなら,14年度用の小・中・養護学校各教科教科書(高校は15年度用の教科書見本)を書架の一面を全部使おう。その裏面の書架から年度を遡りながら小・中・高・養別に配架してみよう。
 これが私の教科書センターの現在の構想である。

 ここには司書がいない。これだけの資料の管理,図書室の運営はそれでは難しいかもしれない。いずれそのことも進言しなければならないだろう。
 とりあえず今は,教科書の山の中にいて,その山を低く崩すのではなく,多くの人の目に見えるようにしなければならないと考えているところである。(2002.11.14)