そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.11 春・別れ

今年のツバメはずいぶん早くやって来た。3月15日,6年生とお別れの会をしているときにチラッと見かけたような気がして,しばらく空を見ていたが確かめられなかった。しかし,17日にははっきりと飛んでいる姿を確認した(鳥取でのツバメ初見日は平均3月25日)。

 モンシロチョウは3月18日卒業式の前日に見かけた(鳥取でのモンシロチョウ初見日も平均3月25日)。桜ももう咲きそうな雰囲気である。何もかも早い春の訪れである。私は3月で退職だから,ひょっとしたら別れの雰囲気づくりが急いで行われているのではないかと思ったりした。

 3月22日,朝から雨。雨は間もなく上がったが,黄砂現象なのかどんよりと黄色っぽく曇っている。中国では黄砂が深く,車がライトをつけて走っているとテレビが報じている。そう言えば何年か前の中国の旅のとき,西安でも北京でも,空も町も黄色っぽい感じだったのを思い出す。

 5年生以下の子どもたちもこの日が3学期最後の日となる。
 私はいつものように7時35分に家を出る。私は,教頭になったときから今日まで12年間,勤務開始30分前には学校に到着するようにしていた。職員にそうするよう特にすすめいているわけではないが,「勤務時間ぎりぎりに出勤するようなことはいけない」ということは言って来た。私自身が実行して確信していることだから間違いはない。

 さて、離任式もこの日に行う。この日は幼稚園の修了式(卒園式)もあり,私は出たり入ったり忙しい。幼稚園から帰るとすぐに離任式。そうだ,あいさつをまだ何も考えていなかった。こんなときに役に立つのが詩の一節である。3月の高学年の課題とした詩「じゃあね」(谷川俊太郎)は,私の好きな詩の一つである。一部引用する。

 どこか見知らぬ宇宙のかなたで また会うこともあるかもしれない
 じゃあね もうふり返らなくてもいいんだよ
 さよならよりもさりげなく じゃあね じゃあね……

 なんて素敵な言葉で別れを表現しているのだろうか。こんな詩を子どもたちに紹介してやれてよかった。子どもたちにその心が少しでも伝わり,何かの折にふと思い出すことがあれば,私にとって最高の幸せと言えるのかもしれない。