そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.111 船井武彦展 

 昔の詩の先輩の井上さんから「船井武彦展」の案内が来た。どうして井上さんからというつながりは分からないが,先日国民文化祭で出会ったから思い出して案内をくれたのかもしれない。

 船井武彦氏は昭和35年鳥取大学に入学した仲間である。私は小学校教員養成課程,彼は中学校教員養成課程だったが,美術をやっていた彼は文芸部とも多少の交流があり,話し合うことも時々あった。だからあえて「仲間」と言わせていただくことにする。船井氏は「迷惑だ」と言うかもしれないが。
 大学卒業以来会ったことはなかったように思う。私は小学校の教員として38年間過ごしたし,彼は平成9年版の鳥大卒業生名簿によると関西地方のある大学の助教授となっている。同じ教育の道でも勤務地,校種,教科等が違えば出会う機会はほとんどない。

 せっかくの案内である。喜んで出かけた。初日の展覧会会場には数名の訪れがあった。
 彼が他の人と話していたので作品を見ていると,
「清水さん,お久しぶりです。どうもありがとうございます。」
と声をかけてきた。学生時代鋭く厳しい美意識を持っていたが(そんな記憶がある),今見る彼は柔らかくにこやかであった。少しの時間お互いの現況などを話し合う。

 120枚あまりのドローイング・ユニットの1枚1枚にも一つのイメージを感じることはできるが,それが壁面を埋める構成となると,そこには連続する流れがあり,変化を見る思いがし,相対する不思議な空間が生まれる感じさえする。一つの壁面から訴えてくるものと,他の壁面から訴えてくるものがぶつかり合っているのだ。
 私は絵画のことはほとんど分からない。これ以上書くとぼろが出るからこれくらいにしておこう。しかし,鑑賞する価値のある個展である。ぜひ見るようおすすめする。

「そろそろ仕事もやめて,悠々自適です。この会を持つのにはそんな気持ちもあるので す。」いやいや,まだまだこれからですよ,自分の力を発揮するのは。船井さん。
     (2002.11.21)

 船井武彦展ドローイング・スペース2002 
  11月21日(木)〜11月26日(火) AM10:00〜PM6:00
  ギャラリーあんどう 鳥取市本町1丁目201