そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.123 忘年会 

 詩誌「菱の会」が浜村で忘年会をするので来ないかと,声がかかった。というより,会の小寺氏から「浜村で忘年会をしたいが,どこがいいか」と相談があったので,ちょっと話をしたところから私も呼ばざるを得なかったのだろう。
 一つには文芸の小径を巡りたいということも浜村を選んだ理由のようだ。「池澤氏の詩碑もあるしなあ」と考えたのだろう。

 理由はなんでもいい。たまには昔の仲間と飲み,語るのもいい。駅で迎える。私を含めて12人,このような仲間としてはいい人数だ。
 最初に文芸の小径を散策する。一時間半もあるので一つ一つ見て回ることにするか。池澤氏がこの径のできる経過をよく知っているので,その話を聞きながら歩く。
「町のやり方はまことに下手で,自分たちでは何もしようとしない。この小径も我々が金を出してつくって,町は観光施設ができて喜んでいるような状態だ。」
 池澤氏の意見は厳しい。

「清水さん,あれが鷲峰山か。」
 鷲峰山を詠んだ句碑をみながら,真後ろに見える山を指して訪ねる。
「そうです。あの山のことを私が因幡富士だと書いたら,ちょっとクレームがつきまして,『何か文献があるか』と聞くのです。『文献は分かりませんがこの辺りの人はそう言っているのです』と答えたのですが。」
「ここから見える鷲峰山なら『因幡富士』と言っても文句はない。」
 一致した意見だった。

 少し時間があるので,海岸まで出る。きょうはいい天気になったが,週初めの風雪の名残で日本海は荒波が打ちつけている。ゴミが打ち上げられ,切れ切れになったクラゲも散乱していた。これが日本海だ。

 ちょうど1時間ばかりの散策の後,忘年会の会場へ到着。浜村駅に近いのがいいということで駅前の寿司屋に予約していた。この家は古く,きれいとはいえないが料理はいい。
 国民文化祭現代詩大会の成功,西崎氏の快気祝,小寺氏の詩集『挽木橋にて』出版祝も兼ねた会だった。しかし何より,みんなで集まって近況を語り合い聞き合って,また新たなエネルギーで会の続行,発展に頑張っていこうという節目の会だ。
 いつもは一人の晩酌だが,この日ばかりはわいわいと飲んだ半日であった。(2002.12.18)