そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.137  こもり 

 
 勝見は昔からの風習を大切にしているところである。
 正月3度の「こもり」を経験した。これもずっと以前から行っているものらしい。「こもり」は「子守り」ではない。

こもり 神社や寺院に泊まって祈念すること。参籠。(小学館『日本国語大辞典』より)

 8日には「薬師ごもり」があった。
「薬師は,温泉の守護神で,本尊は東方瑠璃光薬師如来。薬師堂の創立は,永禄年中(1558〜1570)と伝える。瓦や幕に池田家の紋所を使用しているように,代々池田藩主の崇敬を集めた。縁日の8日には村人がこもり堂に集まり庵主さんとともに拝む。」(『いで湯の里 勝見のあゆみ』勝見郷土誌発行委員会 平成10年発行)
 今年もその通り実施,40名ほどの参加者があった。
 
 15日には「講社ごもり」。講社というのは勝見地内にある黒住教の教会所のことをそう呼んでいる。
 黒住教勝見中教会所は,「嘉永元年(1848),教祖の宗忠神(むねただのかみ)の女婿の桜井喜間太利房が加知弥に足を留めて布教し,嘉永3年,勝見の湯口作平光清が入門。明治21年(1888),薬師山の北西麓に黒住講社を建て,明治32年に現在地に移ってから始まった。」(前述『いで湯の里 勝見のあゆみ』より)
 15日が成人の日だった頃は参賀者も多かったらしいが,祝日でなくなったため,今年のように平日となると大きく減った。今年は十数人の参加であった。

 21日には「加知弥神社ごもり」。
「神社は創立年代不詳だが,延喜式神名帳に載っているほど古い歴史をもつ。江戸時代まで勝宿大明神とよばれた。午前十時ごろ,作った料理を重箱につめ,酒をさげて加知弥神社にお参りし,神主に拝んでもらう。」(前述『いで湯の里 勝見のあゆみ』より)
 信仰に対する考えもだんだん変わってきているのだろう。今年の参賀は区長と副区長と私の3人だけ,正味30分ほどの簡単なものだった。

 泊まりまではしなかったが,「よい年になりますように」と年頭に当たって,神様,仏様にお願いをした。日本は「八百万の神」の国である(このページNo.95参照)。だからいろいろなものにすがる姿は普通かな,と思う。かえって,無宗教だ,信心などない,と言っている方が不自然だ。
 郷に入れば従え,か。(2003.1.22)