そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.145  顕微鏡で見る世界(自然観察会3) 

  2月の自然観察会は,教室(鳥取駅前NHK文化センター内)で行われた。色鉛筆を準備してください,ということだったのでルーペでも使って絵を描くのかと思ったら,
「今日は火山灰土を顕微鏡で観察します。」
と清末先生。なるほど部屋には顕微鏡が7・8台準備してある。
「これは青谷上寺地遺跡の発掘の所で出たものです。こちらは淀江のものです。比べて見てください。火山灰の中にすばらしいものが見えますよ。」

 先生によると,大山の噴火は2期にわたっているという。最初は5万年前,トロイデ式の火山噴火があった。溶岩は柔らかく,山を押し上げるほどの大きな噴火ではなかったという。
 さらに2万5千年から3万年前の噴火(コニーデ式噴火)で,現在の山の形が出来上がった。このときの火山灰は,偏西風に乗って流れたと考えられ,遠くは男鹿半島で観察される。2期の火山活動を合わせて,「トロコニーデ式火山」と呼ぶのだそうだ。

 火山灰を少し水に溶かして茶色の灰を流して,沈殿物だけにしていく。それを紙にまばらに撒いた状態で接着剤でくっつけて,乾燥させて顕微鏡で観察する。
 見える,見える。
「長石,斜長石,石英,方解石,白雲母,黒雲母,軽石,そろばん玉石も見えます。」
と,清末先生。後で主なものを一つずつ顕微鏡で見せてくださった。
「双子の水晶です。」「方鉛鉱です。」などなど。あの灰の中に美しい世界があった。
 逢坂小学校のあたりの「くろぼく土」も,大山の噴火の火山灰土が酸化変質したものだと聞いている。顕微鏡で見たことはなかったが,また別の世界が見えるのかもしれない。

 その後,蒜山高原の日本一の露天掘りから採取してこられた珪藻土を観察した。約2万年前,旭川の上流が火山活動によりせき止められ,「蒜山湖」ができあがったが,そのせきが崩れて湖の水がなくなった。蒜山湖は高原となり,珪藻は珪酸(ガラス質)に護られて「珪藻土」として残った。
 顕微鏡で見られたのは,丸型のものだけであったが,他にもさまざまな形のものがある。

 そう言えば,以前5年生くらいの理科にプランクトンの観察をするものがあって,珪藻土などを観察した記憶がある。あの教材はどうなったのだろう。
 顕微鏡で見る小さな画面に,過去・現在の大きな世界が見える。(2003.2.8)