そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.148  2月の詩 

  
  川        清水 行人


川は流れる すきとおって
音たてて流れる 心に染みて 染み込んで
流れる 流れる
四十年前の川のほとりにいた
ここ私都(きさいち)の里に私は佇んでいた
子ども達の笑いや驚きや歓声が
まだそこには残っていた

川は流れる しぶきを上げて
流れる 流れる
上流には深い淵があり
たんぷりも泳いでいた           ※たんぷり・たんぶり……岩魚(いわな)
川底にしなやかな魚影が見える
子どもたちは潜り 魚を追い
水面に浮かんでは微笑んだ

川は流れる 水面は輝いて
きらきらきらと光りながら流れる
流れる 流れる
川を上って行きつくところの
小さな小さな村だった
今年 雪は少ない
家もまばら 人影もない

川は流れる ごうごうと音立てて
映るすべての景色を淵に飲みこみながら流れる
流れる 流れる
どこに行ったのだろう あのざわめきや
子ども達の 感嘆の顔々は
川は流れる ごうごうと音立てて
映るすべての景色を飲みこみながら
流れている
                  (2003.2.15)