そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.152  小さな同窓会 

  

「ちょっと寄って話をしようか。」
 水田氏から電話があった。同窓生の彼とは,何十年来の付き合い。現職のときは話す機会も多かったが,1年早く彼が職を退いて,会うこともだんだん少なくなっていた。
「まあ,昼食をとりながら,2・3人で話そうか。」

 一昨年,我々は大学時代の同窓会を持った。退職前の年で私は忙しかったが,一応幹事として仕事を受け持った。もちろん彼や佐治氏は退職組で中心になって動いた。
 まずまずの参加者を見て再会を誓って別れたのだが,次回当番を受け持った県西部の会員の動きがあまりなく,近くの人だけでちょっと集まることを思いついたらしい。

 鹿野の国民宿舎「山紫苑」に集まったのは,竹本氏を加えて4人。鳥取市,八頭郡にはまだまだ仲間はいるが,声のかけやすいところだけの集まりだった。
 それぞれが近況を話し合った。竹本氏は,高齢者対象のための福祉関係の仕事をしている。佐治氏は,県内の自動車道路建設に関する調査の仕事,水田氏は農業。

 彼は,退職後2年目で,生活にも少し慣れた様子だ。
「農業ということになると,農業収入も税務署に申告せんといけんなあ。」
「そうだけどなあ,うちの農業はマイナスだ。」
「なるほど。まあ,真実のところはわからんけどなあ。自分の家で食う分ができるだけでもええわいや。」
「最近は猪が田んぼを荒して,みんなげが困っとる。それで,去年狩猟の免許を取って,今年は6頭も獲れた。」
「そら,すごいなあ。」
「今日は冷凍して一塊ずつ持ってきたけ,帰りに持って帰って。」

 そのあと,「今の学校は……」などと,ちょっと先輩ぶった話をして(現場の校長がいないものだから)長い昼食を終えた。それから温泉にゆったりとつかる。ここの温泉は掘削され使われるようになって歴史は浅いが,利用者は多い。浜村温泉の方が歴史ははるかに長く,全国的にも名が知られているが,観光行政のまずさからか,旅館・ホテル等の施設所有者の工夫不足からか,最近は閉鎖・倒産続き。困ったものだ。

 雨が本降りになって,時間もそろそろ。再会を約して,猪を手に西へ東へ。牡丹鍋が楽しみだ。  (2003.2.24)