そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.16 入学式

 自分が校長として行う入学式は7回して来た。卒業式に比べると式そのものはずっと短いし,楽に見えるがそうでもない。学校長の式辞は何度やっても緊張するものだ。朝からモーニング姿で出勤するわけにもいかないし,着替えのタイミングを考えていると,突然来客があったりする。どんな事でも慣れないと難しい。

 今年は来賓としての出席である。開式15分ほど前に行ってみると,もう大方の来賓がそろっていた。
 色刷りの栞は,昨年度の卒業式からはじめたものだ。表紙には満開の桜と校舎の写真が使ってある。今年は桜が早かったからうまく使えてよかったな,と思ったが,待てよ,この写真どこかで見たことがある。
「今年の桜の写真ですか。」そっと職員に訊ねる。
「いえ,ちがいます。」そうか。桜が早過ぎて写真が間に合わなかったのだろう。

 入学式は30分ほどで滞りなく終わった。ステージに上げられて新入生は幾分緊張気味。校長や来賓の『おめでとう』に対して,『ありがとうございます』の声が凍って出てこない。57名の上級生達も,本年度最初の行事,新入生ほど緊張はしていないが,一生懸命臨んでいる。たった20日ほど会っていないだけなのに,ぐんと成長した感じだ。1学年の進級を全身で感じているのだろうか。
 12名の新入生と57名の上級生,近所の仲間達だ,すぐに慣れて,またともにいろんなことを進めていくだろう。
 
 午後は中学校の入学式。逢坂小学校の卒業生8名も入学する。式に行ってやれないので,登校の様子を見てやろうと思って道路で待っていたが,時間が合わなかったのか保護者といっしょに車で登校したのか見ることはできなかった。

 翌朝,交差点で街頭指導の人たちといっしょに待つ。新しい自転車で,新しいヘルメットで登校。ちょっと恥ずかしそうに,うれしそうに,あいさつをして登校して行った。やはり,6年生のときとは違った少し大人びた雰囲気を感じた。

 進級・進学,一つの通過点に違いないが,それは子どもたちに大きな成長を与える。そして私は,学年末の諸行事(卒業式,修了式,離任式,送別会等)以上に,私自身の仕事を一つ終えたな,という気持ちを抱いたのだった。(2002.4.10)