浜辺にて 清水行人
風は海から吹いていた
波を吹き飛ばして
波の花を打ち寄せて
波打ち際に泡を残す
吹き上げられて
足に当たる砂はちくちくと音たて
沖には黒い雲が走った
あんなに沖に離れているから
北国はまた雪だろうけど
ああ もう春が来るのかもしれない
群生する砂丘植物の間を風が吹き抜けて
砂が飛ぶ
浜にはだれもいない
アカシアはまだ枯れた姿のままで
とげを立てて武装しているが
風の音から
春の気配を感じているかもしれない
吹き上げられた砂が
路上にうなりを上げて走る
今日も犬と狢の轢死体が放置されていた
いつもの景色で
通りかかる車は
とどまることなく行きすぎた
風は冷たく顔を刺し
砂は音立てて駆けめぐり
いつもの風景が
今日も広がり
この浜辺に また春が来るのかもしれない
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