そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.167  3月の読書 

 芥川賞「しょっぱいドライブ」(大道珠貴著)を『文芸春秋』3月特別号で読んだ。年老いてしょぼくれた男性と,なんとなくミーハーで回りから受け入れられていない三十代の女性との変な関係を描いている。人間関係は描けているが,あまり気持ちよく読めなかった。文章は書きなれていてうまいのだが,どうも私の性格に合わない。

『文芸春秋』のこの号では「日本語大切」を特別企画している。
 102ページにも及ぶ企画の中にはつまらないものもあったが,「数学者の国語教育絶対論」(藤原正彦)は「教育を立て直すこと以外に,この国を立て直すことは無理である。」と断言し,特に「小学校における教科間の重要度は,一に国語,二に国語,三,四がなくて五に算数,あとは十以下」と言う。小学校における国語時間数を増やすこと,教養の土台を読書により育てることなど,私も同感の意見が多い。

『ひとり暮らし』(谷川俊太郎 草思社) 著者はもちろん詩人の谷川俊太郎である。
 私の現代詩のスタートは,この人の作品に触れたことにあったのかもしれない。いや,金子光晴や草野心平が時代で言えばその前に来るのだが,谷川とは年代的にも近く(本当は10歳違う),新しい詩の感覚を教えられたのはこの人だったと思う。今でも「二十億光年の孤独」や「ネロ」には新しい感覚があるような気がして,つい読み返してしまう。
 そんな詩人のエッセイ集である。

 児童文集『あじさい48集』(県児童詩文集)が送られてきた。私も県の小学校国語教育研究部に長く所属し,この文集にもかなり深く関ってきた。近年応募作品が減少し続けている中で退職してしまったので,気になる事業の一つであった。
 今年は作文が少し増え,逆に詩の応募が少し減っている。やはり,指導要領や教科書教材における指導内容の濃淡が応募数にも表れるように思う。半世紀にも及ぶこの文集をなんとか続けていってほしいものだ。

『くろぼこ74集』(逢坂小学校文集)と『フレンズ』(桜小学校卒業文集)も届いた。校長になってからの子どもたちだから,直接の教え子とは言えないかも知れないが,懐かしく思い出しながら読む。それぞれに新しい学習環境で元気に励んでほしい。

 さて,この「空の山通信」も本格的に始動してから一年が終わった。ご愛読に感謝。2日に1回アップという自分への課題はなんとか守れた。内容的には今一つか。
 4月からは新しい取組みも入れて続けていきたいと思っている。勝手に春休みをいただいて,4月8日ごろ新年度スタートをめざす。続けてご愛読を。(2003.3.28)