そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.17 スギナ

 4月に入って雨が少なく,日課の草取りが順調に進んでいる。1日も欠かしたことがない。
 お日さまはぽかぽか,ちょうちょも飛んで,花もいっぱい,鳥のさえずりも賑やかだ。
 雑草もさまざまだが,今はスギナのシーズンといったらよかろう。
「ツクシ誰の子,スギナの子」とよく言われるが,スギナというシダ植物の胞子を作って飛ばす特殊な茎が「ツクシ」であることはよく知られていることである。

 ツクシが早春の象徴として,また,その姿からなんとなくかわいらしい存在と思われていることが多いのに対して,スギナは地下茎を延ばし地面を覆う邪魔者として扱われることが多いようだ。

 昔からツクシは食用としても知られている。おひたしなどを口にした人も多かろう。もっともその手間はなかなかたいへんだし,今の若い人たちや子どもたちの口にはあまり合わないかもしれないが。
 スギナは私も食べたことがない。「スギナも食べられるが,一般的ではない……」(「山の幸」山と渓谷社)とあるので食べられなくはなさそうだが,よほどまずいか手間がかかるかではなかろうか。また,「利尿薬に用いる」(日本国語大辞典)とも書かれている。
 
 我が家の畑や花壇として使っている土地にも,ツクシが終わると,飛び散った胞子から芽や茎を出し,スギナがびっしりと生え覆ってくる。そして,先程も書いたように地下茎を延ばしてどんどん広がる。
「スギナの根は地獄の底まで続いている,とまで言われている」
と,近所の人は言っていたが,地獄の底どころか,何十センチも地下茎を追っていったことがないからどうなのかわからない。
「本属に近縁なものは古生代,中生代に大いに栄えた。」(「世界大百科事典12」平凡社)そう言えば,恐竜時代の絵にこんなのがあったような気がする。ということは何百万年ものスギナの思いが,今ここに顔を覗かせているということなのか。
 草取りをしながら,いろいろ考えた。
 
 地獄の底から這い上がり
 ようやく地面に顔を出した日本のスギナよ
 お前たちは地上に何を見ようというのだ
 座りこみ見つめる失業者の深い目か
 実りなき論議を続ける政治家たちの空しい演技か

                                (2002.4.12)