そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.174  入り込み(勝見シリーズ7) 

 
 勝見には温泉の共同浴場がある。
「勝見共同浴場の始まりは,薬師堂の下の『一の湯』に由来する。明治末年ごろ,現在地に移され,最初は『い入りこ゛込み』という呼び名で,村びとはむろん,村びと以外の人にも広く開放されていた。」(「勝見のあゆみ」より)
 さらにこの温泉については二つの伝説がある。

 一つは「鷺ノ湯」伝説である。
 昔,勝見薬師堂付近は大きな沢で,足を痛めた一羽の鷺が元気を取り戻して飛び立ったあとを調べてみると温泉が湧いていた,というものである。
「鷺の湯は勝見温泉の始まりとされ,文亀元年(1501)とも永禄六年(1563)の発見ともいわれるが定かではない。永禄六年の場合,首藤(穴戸・支堂)豊後守が白鷺を弓で射てという話が入る。」(同上)
 この種の伝説は全国各地の温泉にあるようだ。

 もう一つは「姫石温泉」伝説である。
「鹿野城主亀井茲矩は幼い姫を連れてたびたび入湯したと伝える。その折,湯壷が深くて姫の背が届かなかったので,家来が手ごろな青白い石を拾ってきて,湯に沈めて姫をその上に立たせたという。それ以来,茲矩はこの石を『姫が石じゃ』と村人に言い,姫の専用に使った。これにちなんで村びとは『姫石温泉』と呼ぶようになった」(同上)
 石の大きさまで細かく書いてあり,なんとなく信憑性がある。

 いわれのある勝見の温泉だが,我が家からは数百メートル離れたところなので,残念ながら私は利用していない。勝見の下の方に第2浴場を作ろう,という声が上がったこともあったが,実現しなかった。
 貴重な勝見の財産ともいえるこの温泉も,数年前に行われた「浜村温泉集中管理」によって町のものになってしまった。なんとなく納得のいかない話だが,現在は共同浴場の湯も「町から買っている」状況である。ますます納得できない。

 薬師祭りを前にして,共同浴場の大掃除を役員で行った。浴槽はもちろん,天井から壁,脱衣場などもきれいになった。
 勝見共同浴場入浴料大人200円・子ども100円。こんなに安い値段で体も心も温まりますよ。みなさんどうですか。(2003.4.13)