そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.190  二つの展覧会 

  片岡鶴太郎の「染と織展」の広告が新聞に入っていた。あの個性派俳優の鶴太郎である。美術方面でもけっこう名が知られていて,テレビでも名前を見かけることがある。
「見に行こうか。」と妻に言うと,「そうしようか。」と言う。
「いつにするか。」と言うと,「今日か日曜日しか空いてない。」
「じゃあ日曜日は混むかもしれないから今日にしよう。」
と,早速出かけることになった。

 鳥取市の書店の2階が会場である。予想に反して見ている人は2・3人。「日曜日でもよかったんだ」と思いながら見ていると,会場案内の人がやってきて説明してくれた。
「原画と糸の染めは鶴太郎がします。西陣織の職人がそれを原画に従って織り上げるというとても手間のかかる仕事です。ですから予約販売と言っても,そんなに多くの作品はできません。」
 大きな作品で30万円ほど,小さなもので10万円くらい。作品を見ていて,これならそう高くはないなと思った。でも,プリントのハンカチ(1000円)を1枚買っただけで会場を後にした。プリントされた『虎魚』は我が家の居間の壁にはりついて,「誰がおこぜやねん」とにらんでいる。 (2003.5.22)

「7人の巨匠展」は,県民文化会館で開かれていた。ここも展示即売である。
 国内著名作家の作品のリトグラフや,本画の展示されている作家もある。東山魁夷,平山郁夫など名前の出ている画家のものは,リトグラフでも2・3百万。実は我が家にも一点あるのだがこんなに高くはなかった。まあ,こういう公の場所での商売だから,値引きも難しいのかもしれない。
 本画の中にもいいものがあった。それほどの金額ではない,でも,ここでの値段は高めのような気がするから,今度知り合いの美術屋さんに聞いて見よう。

 2・3日してその美術屋さんが久しぶりに顔を見せた。こちらの気持ちを察して来たのかなと思われるようなタイミングだったがもちろんそれはない。巨匠展の話をすると,
「それは誰の作品でしたか。」と聞かれた。ところが覚えていない。何人かの名前を上げる中に見覚えのあるものがあったので,
「ああ,それそれ。」と答えると,
「本画だと,とても大変な値段ですよ。」と言う。
「いや,それほどじゃなかったけどなあ。」
 後でいろいろ調べて別の作家と分かったのだが,美術の世界は金もかかって難しい。
       (2003.5.25)