そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.196  山下清展・白壁土蔵の町 

「元気のご様子、慶賀の極み。
 僕も昨日 あやめ池と三徳山に行って来ました。三徳のお山にホトトギスが鳴いて、よかったな。京都のお方を案内して、山下清展に行った後、回った次第。
 貴兄は山下に行きましたか。いいですぞ。」

 こんなメールがKさんから届いたのは6月19日だった。山下清展は,倉吉市とN新聞社の主催で倉吉博物館で6月7日〜29日まで開かれていた。23日間で三万七千人もの入場があったという。
 私も6月10日頃に行っていて,このページにも載せる予定にしていたのだが,他にも予定している記事があってなかなか順番が回ってこなかった。

 山下清については言うまでもない。全国を放浪し,あの精細緻密な貼絵を多く遺した天才画家である。
 今回の展覧会では,八幡学園時代から1971年に永眠するまでの,貼絵,ペン画,油彩などの作品百点位と,彼が使っていた道具などが展示されていた。倉吉,鳥取を訪れたときの様子も展示されている。
 ほんとうに細かい。そして美しい。言語障害,知覚障害と言われているが,こんなすごい仕事ができているのだ。感動する。

 博物館を出て,倉吉の町を歩く。妻は羽合町の出身だし,私たちは30年ばかり前に3年ほど上井町に住んだこともあるから,珍しい土地ではないのだが,久しぶりにこの白壁土蔵の町を楽しんだ。
 市役所近くに無料駐車場があって,車を置くと案内の人がパンフレットを示しながら説明してくれた。今はどこの町でも自分たちの町を知ってもらおうとこのようなボランティア活動をしている。

 南北朝時代,打吹(うつぶき)山に城が築かれ城下町として発展した倉吉の,この市役所・博物館の辺りには,現在も玉川沿いには白壁土蔵群や町並に昔の面影を見ることができる。
いわゆる町並保存地区である。ところが,先日この一角で火災が発生し,土蔵の一つがほとんど全焼状態になってしまった。そんな跡も見ながら歩く。

 ちょうど昼時,腹が減った。古い民芸品を見ながら土蔵蕎麦を食べる。初め私たちだけだった店に何人かの客もやって来た。山下清効果がこんなところにも少しずつ見えるのかもしれない。