そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.200  春の院展 

 N新聞社の企画による「第58回春の院展」が県立博物館で開催(7月8日〜14日)された。平山郁夫理事長の挨拶文によれば,日本美術院の「小品展」が「春の院展」と改められ今日に至ったものらしい。鳥取で開催されるのは初めてということで,新聞社創刊120周年記念事業の一環として開催された。新聞はたびたび取り上げているし,せっかくの機会だから見てみよう。

 残念ながら鳥取県には県立の美術館がない。建設の話がほぼ固まり,場所も特定され,そこにあった施設も取り払われたところで話は壊れた。知事が拒否したというように伝わっているが,真実は知らない。そして,いまだに美術館は建設の運びにならない。
 前にあった青少年育成の施設がやはり必要ということで,建設の方向に向かっている。
 そういうわけで,県が絡む美術展は今も県立博物館を会場にしているのである。

 さすがにいい作品に出会えた。といっても素人の私にはそのよさの半分もわからないだろうけれど。知事が誉めていた「朝切鳥話」(宮廻正明)は構図かな。「ミコノスの夕」(福井爽人)は去年見てきたエーゲ海のあの色が素晴らしい。我が家のクリスタルカップを思い出す。「敦煌大仏」(松本哲夫)のとらえ方もおもしろい角度だ。「向日葵」(柄澤英子)はどっしりと重みがあるいい作品だ。

 途中3年ばかりも会っていない先輩Hさんを見かけた。ちょっと入院していたと聞いていたが,奥さんと二人連れで元気そうだった。
「どうしているんだい。詩は書いているのか。」
「いや,書いていませんよ。Hさんこそどうですか。」
「もっぱら百姓だ。」
「ああ,それがいちばんいいですねえ。」
 見終わって出るようになって今度はやはり先輩のIさんに会った。
「さっきHさんに会いましたよ。」
「暇なやつが来るんだな。」
 まあ,そうでしょう。仕事がある人はこんな平日の昼日中来られるわけがない。

 帰りによった喫茶店の隣で,福島田鶴子個展(ギャラリー百花堂 7月8日〜14日)
していた。新聞に出ていた評(鈴木早苗氏)では,「人物の描き方が絶妙」という見出しだったが,この個展に出品されている作品で人物が描かれているのは,2点(いずれも題は「陽だまり」)である。開催の日を同じにしているこの小さな個展を,コーヒーの後味わった。