そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.208  ドバイの I 先生 

 I先生からの葉書を見たのは3月のことだった。
「2003年3月15日より2006年3月まで(予定)デュバイ日本人学校(アラブ首長国連邦)に勤務します。道徳教育・体力向上(本校の教育)を通して,「生きる力」の育成に全力投球で日々邁進する覚悟です。元気でがんばります。」
というものだった。イラクをめぐる問題が世界を飛び交っている時期だった。
 I 先生とは10年以上も前に,ハンガリー,ドイツの学校視察をともにした仲間である。このグループは結束が強く,現在でも1・2年に1回程度の懇親会を持っている。しかし,彼はその会にはあまり出席されない方だった。したがって,海外教育に対する考えや気持ちなどを話し合う機会はほとんどなかった。

 4月,教職員人事異動がはっきりしてから,私はドバイの学校あてにメールを送った。
「3月にはがきを見たときには大変驚きました。よく思いきられましたね。1ヶ月以上たって,すこしは慣れましたか。デュバイがどんなところか私は知りません。また教えてください。イラク戦争も心配ですね。
 ニジェールに行っていた知人が,昨年帰ってきました。向こうにいる間メールのやりとりをしていました。先生ともそうしたいものです。私のメールアドレス並びにホームページのアドレスは下記のとおりです。日本のことが少しはわかるかもしれません。時々覗いて見てください。お元気でご活躍を。返事お待ちしています。 清水行人」

 それから先日まで交信は途絶えた。忙しいのか,あるいは,イラク戦争で派遣が延期になったのか,などとも考えていた。しかし,返事は届いた.
「大変ご無沙汰しました。ドバイ日本人学校も夏季休業に入りました。以前からメールを頂き,気になっていました。
 日本人学校へ一度は勤務したいという夢は若い頃から持ち続けていましたので,ようやく夢が叶いました。
 日本の学校と違い,教育方針にも多少のズレがありますが,子どもたちに確かな学力を付けるということでは,どこも共通しています。
 ただ,日本と違い,教育環境が不十分なところもあるのはいなめません。特に,ここドバイは気温が40度を越える6月から9月頃までは,しんどいです。
 夏季休業に入った今,日本人のどの家族も,お父さんを残して皆,帰国しました。私は,こちらでのんびり,1学期に遣り残した仕事を片付けています。
 メールを下さり,ありがとうございました。 I・K」
 
 早速返信メールを送る。
「お元気そうでなによりです。自然環境だけでなく社会環境も全く異なるところでの教育活動はたいへんでしょう。以前ニジェールに行っていた私の知人もそんなことを知らせてきていました。なかなか難しいこともあると思いますが,信念を持って教育に当たってください。
 こちらは梅雨末期の雨が続いています。九州では集中豪雨の被害も出ました。でも,間もなく暑い夏を迎えます。
 先生には,なにより体が大事です。健康には十分気をつけてください。また次の便りをお待ちします。  清水行人」