そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.222  青島観察

 9月の例会は湖山池に浮かぶ青島での観察だった。
 湖山池には有名な長者伝説がある。もちろん,そんな長者は実在しなかっただろうし,湖山池のでき方についても,この伝説と違うことはだれでも知っている。しかし,「情のない長者に対しての戒め」とか,「長者の自然に対するおごりを懲らしめたもの」などと教訓的に考えるより,扇で太陽を後に戻らせるという雄大な発想は見事ではないか。

 私は湖山池の周辺を通ることは多いが,青島を歩いたことはない。青島は,周囲1.8キロメートル,標高60.8メートルの湖山池の中でもっとも大きな島である。対岸から青島大橋がかけられ,運動広場やキャンプ場など島全体が社会教育施設として利用できるようになっている。また,島の周りを一周する遊歩道も設けられている。

 台風14号の影響が残る中,自然観察会はこの青島で行われた。ときおり強い風が吹き,池も波立っていた。池の表面に緑色のものが広がって浮いている。
「ヒシです。その近くで浮いたり潜ったりしているのはカイツブリ,少し大きいのはカルガモです。」
 今日清末先生は捕虫網を準備しておられる。台風の後,チョウはお腹を空かせて蜜を求めて出てくるのだそうだ。そう言えば我が家のヒャクニチソウにもアオスジアゲハが2匹やってきていたし,アゲハチョウも何匹か飛んでいた。

 橋を渡って,まず展望台まで登る。途中,サクラの木にとまっているセミを捕らえて音を出す仕組みや目の作りなど体の作りを講義。
「セミの目が後ろ向きについているのは,木にとまっているとき後ろのものが見やすいようにです。だから,せみ(背見)。」

 展望台近くの空にトンボが飛んでいる。
「ウスバキトンボです。沖縄辺りから船のマストにとまったりしながら飛んできて,卵を産み,トンボになることを3回くらい繰り返しますが,寒くなると全部死んでしまいます。毎年それを繰り返しています。死滅飛行と言っています。」

 その後,観察しながら島を一周する。植物の紅葉や実が熟するには早く,茸も一ヶ月早い。その代わりに昆虫はたくさん観察できた。
 最後百メートルほどになってから急な雨。台風の残し物にすっかりぬれてしまった。