そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.226  松江・三瓶観察の旅

「今月の27・28日空いていませんか。」
 自然観察の会の松田さんから声がかかったのは9月の自然観察の会でのことだった。私は手帳で確かめた。25・26日には学校図書館協議会の関係で東京に行くことにしている。最終便で帰るから夜遅くになるが,明くる日のことだから大丈夫だろう。
「空いていますが,なんでしょうか。」
「三瓶(さんべ)山の辺りの観察をしようという話がありまして,いっしょにどうかと思ったものですから。」
 連日の外出はどうかなとちょっと気にはなったが,せっかくの機会だからと,いっしょに行くことにした。清末先生も,
「(その件で)何度も電話をしたのだが,留守だった。」
と言われる。どうもスイス旅行の頃の話らしい。
 そんなわけで「松江・三瓶山観察」の旅が始まった。

 松江の柏井さんの家で休憩。柏井さん夫婦も自然観察会の会員で,百キロ離れたこの地から,鳥取の観察会に毎月やってこられる。
 抹茶をよばれて1時間ほど休憩して出発。途中のホテルで昼食の後,宍道湖東岸の「ゴビウス」が最初の観察の場所となった。

「ゴビウス」聞いたことのない名前だったが,宍道湖の自然館。ゴビウスというのはラテン語で魚のハゼ(鯊)のことだそうだ。宍道湖を初めとしてこの近くに生息するハゼは,32種類を数える。この自然館にはこの辺りに見られる水生動物を初めとする動物を集め,観察に供しているが,いわゆる「珍しいもの」を見せるための施設ではないという。
 水族館という役割も果たしているが,小ぢんまりときれいにまとまっており,よく手の行き届いた施設でよい印象を持った。

 ゴビウスを後に一路三瓶に向かう。予定より40分ばかりおくれて西の原に到着したのは午後5時を過ぎていた。バスを出ると寒い。ここでしばらくの野外観察をする。一面のススキの原の向こうに三瓶山がそびえる。
「マツムシが鳴いている。」
  ♪♪ あれ松虫が鳴いている チンチロチンチロチンチロリン ♪♪
 他に昆虫では,ナキイナゴ,カネタタキ,エンマコオロギ,トノサマバッタなど。
 植物では,ツリガネニンジン,ハイメドハギ,メリケンカルカヤなど。

 しかし,寒さが増してきた。今日の宿はTSSロッジ。風呂の後温かい夕食。鱒の塩焼きは予想できたが,天然鰻まで出てきたのには驚いた。イチヂク,アケビのデザートも。
 夜は星の観察,天気はよし。(続く)