そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.227  松江・三瓶観察の旅2

 2日目午前は東の原からリフトで雌山瓶に登り,観察しながら北の原に降りる。
「この前来たときには,リフトの下にマツムシソウがたくさんあった」と柏井さんが言う。それではリフトに乗る前に観察しようと探すが見えない。リフトに乗ってしばらくして,足の下にいくつもの群落を観察することができた。絶滅危惧種に指定されているマツムシソウは,この地でも環境の変化や勝手な採取によって非常に少なくなっているという。

 三瓶山は三つの山が瓶を伏せた状態で並んでいるところから付けられた名前だが,実際には「雄三瓶,雌三瓶,子三瓶,孫山瓶」の四つの山を中心としている三瓶山群の総称である。
「ここには神社・仏閣がありません。つまり山を護る神仏がなかった。ですから木は切られ,そのために植生が変わってしまう。さらにそこに生息する動物にも影響を与えることになります。」

 リフトを降りて雌三瓶頂上まで観察をしながらゆっくりと登る。途中観察した植物は,シオガマギク,コウヤボウキ,ミヤマママコナ,リュウノウギク,イヨフウロなど。
「シラヤマギクとヤマシロギクの違いが分かりますか。」
なんとややこしいことだ。葉の形ですぐに区別できると聞けば確かにそうなのだが。

「これはホタルブクロですか。」
「そうです。それはヤマホタルブクロ」
「ミヤマとかヤマとかつけておけばいいんだ。」
「そんなことではないけどね。」

 北の原に降りるルートは急坂。観察をしながらもようやく下まで降りたのだが,そこから右に行くのか左に行くのか分からなくなってしまった。道は分かれていて標識も案内板も全くない。すぐ下には舗装道路が走っているが間は藪になっていて,それにつながる道がない。みんなで探したがわからないので,結局藪を抜けて道路に出て,バスに拾ってもらった。私たちが昼食の場所として設定していたのは,徒歩で数キロも離れていたところにあった。バスに乗れたからよかったようなもののちょっとこれは案内不親切。

 時間が遅れたために小豆原埋没公園の見学も予定していたがこれは割愛。三瓶自然館「サヒメル」の見学をする。三瓶山を中心として自然を観察する広角的な博物館といったところか。昨日見たゴビウス,この自然館,さらに美術館も整えている島根県はなかなかよくがんばっている。さて,鳥取県は………。

 この観察会で観察した動植物は60点以上,もうはっきりと記憶にないものも多いが,そのイメージの一部は何らかの形で残っているのではないかな。よく歩いた旅だった。