そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.232  大山・蒜山観察会2

 2日目は朝から雨。裏大山から蒜山の観察予定を大幅に変更せざるをえなくなった。清末先生が急遽考えられたのは,境港の「海とくらしの史料館」。午前中をそこで過ごして,天気を見て午後の日程を考えるという。

 境港といえば,水木しげるロードや夢みなと博の施設,境水道大橋,岸壁や市場などが知られているが,この史料館には来たことがなかった。
 ここには,700種類,4000点の魚やカニなどの剥製が展示されている。この剥製は,種政幸さんという人が考え出した特別なやり方で作られているという。「日本一の剥製水族館」ということだ。そのほか,水産業に関する資料や民具なども集められていた。
 子どもたちの見学場所の一つとしてもいいかもしれない。

 昼食は蒜山に予約してあった。大山周辺の代表的なご飯物に「大山おこわ」がある。
〜〜しいたけ,焼きちくわ,にんじんなどを前もって醤油で薄味をつけて煮て,細かくき
 ざんでおく。蒸しあがったもち米を器に移した後,これらの具を飯杓子で切るようにし
 て混ぜ合わせ,再び蒸す。このとき,味つけに使った煮汁を上から適当にかける。〜『聞
 き書 鳥取の食事』(「日本の食生活全集 鳥取」編集委員会 農産漁村文化協会)より
 昨日からの主食はすべてこれ。さらに蕎麦がつくから,毎食かなりのボリュームになる。それでも目の前に出されると食べてしまうから不思議なものだ。

 境港の辺りで止んでいた雨がまた降ってきた。
 中蒜山の裾にある「塩釜の冷泉」を訪れる。全国名水百選の一つで,湧水量毎秒300g,水温11℃。温度・量とも四季変わらない。手ですくって飲むと冷たく甘い感じがする。最近は大量に持ち去られることが多く,泉源には入れないよう柵が設けられている。
 私の家の南6qばかりのところにも「布勢の名水」があって,人々に親しまれ,造り酒屋が水を持って帰ることもあると聞くが,そんなひどい状況にはなっていない。人家が近く,道路もすぐ近くを通っているので,悪質な「持ち逃げ」がないのかもしれない。

 蒜山郷土博物館で無形文化財「大宮踊り」などを見て,竪穴式住居,四つ塚古墳に入る。ここは,四つ塚史跡公園となっていて,古墳時代後期の山間盆地の古墳群としては雄大な規模を誇っている。
 そのうちの一つ1号墳に入る。羨道は低く暗いが,玄室は高く広く入り口から入ってくる光で中の様子がわかる。古墳の作りなどもよくわかる見学だった。

 雨がひどくなった。関金経由で鳥取方面に向かう。外での観察ができなかったので,ずいぶん早く夕食を予約している東郷町燕趙園に着いた。予定になかった燕趙園見学をする。私はこれができたときに,この町内の学校に勤めていたので,できたてホヤホヤの施設を見た。今はかなり傷みがきている。自然・風土が中国と違うので,建造物に使う材料に無理があるらしい。

 今日は屋内での観察が多かったが,建造物一つにも自然の偉大さと先人の知恵と工夫を感じた会になった。 (終わり)