そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.238  この秋の読書

 毎年10月27日から2週間が読書週間である。私は読書週間を一つのきっかけにして,自分の読書生活を見直すようにしてきた。また,読書目標を立て,子どもたちにも話すようにしてきた。自分の読書計画を話すことによって,子どもたちに読書のすすめをしてきた。そうすることによって,自分の目標を明確に自覚する。
 先日「図書館ができたことについて,感想を町報に書いてください」という依頼があったので「年間100冊ぐらい読めそうだ」と書いたが,これも私の目標を多くの人に示したことに他ならない。 

 確かに町立図書館ができて,これまでよりもぐんと私自身の読書環境がよくなった。自分が選べる図書がこれまでの何倍にもなったのである。しかも,書店で選ぶのと違ってお金がかからない。
 大きな書店だと町立図書館以上に本はあるだろう。書店の図書は新しく,心ひかれるものがある。しかし,すべて有料である。また,家の置き場所の問題もある。そんなに買えるものではない。そう考えるとどうしても読書の幅が狭くなる。ちょっとこれを読んでみようかという冒険が少なくなる。これまで読んでおもしろかった作家のものとか,新聞の読書欄や広告に載っていたものが優先してしまいがちだ。

 開館して既に16冊借りているが,頭に残っているものを上げる。
 河野一郎編訳『英米童謡集』。マザーグースを中心に編集している。英語の対訳になっているので,時々英語のページを読むと日本語訳では分からない韻などが分かったりする。
 阿久悠著『文楽(ぶんがく)』。戦後流行歌について,自分の作品も上げながら研究的な作品に仕上げている。
 丸谷才一著『輝く日の宮』。源氏物語に存在したといわれる「輝く日の宮」の巻を,光源氏と藤原道長とをダブらせて推理していく。いい加減な推理小説よりおもしろい。
 綾辻行人著『どんどん橋落ちた』。私がこれまで読んできたものとはちょっと変わった,ファンタスティックな推理小説。
 野村喜和夫・城戸朱理編『戦後名詩選@』現代詩文庫特集版@。これは読み応えがあった。この全集のいくつかをこれから探して読みたいものだと思っている。

 図書館の2階に郷土資料の部屋がある(写真)。私の詩集なども置いてあるのだが,ここをもっと充実してほしい。町内だけでも書き残された資料は多数あると思う。気高郡内まで広げただけでもものすごい資料館になるのではないか。
 そんなところにこの図書館としての特色を求めることもできる。