そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.239  秋深し

山帰来(さんきらい) ここしばらくいい天気の日が続いた。妻が,
「山帰来がほしいから,山に採りに行こう。」
と言う。近いうちに華展があるのでそれに使いたいという。
「山帰来,サルトリイバラの別名」と本には書いてあるが,普通には山帰来といわれているらしい。「俳句歳時記」では,花の方が取られて春の季語になっている。しかし,あの鮮やかな赤い実は紅葉・黄葉の進む山の中では一際目立つ存在である。

 車を走らせ走らせ,ありそうなところで止めて降りて探す。ところがない。やっと見つけても実がついていない。
「実がついてなくてもいいじゃないか。」
「実がついてないとだめ,葉はなくてもいいけど。」
「今年は実が出来なかったんじゃないの。」
 車を降りてしばらく歩きながら探す。少しだけ赤い実のついたのを見つける。「いよいよなかったらこれを使うか」,と妻も半ば諦め顔。私は普段通らないわき道に入る。

「あった。」
 なんと見事な赤い実をつけたサルトリイバラが,コナラの枝に巻きついている。枝を引き寄せ,必要なほどの長さのものを切り取る。
「後は残しておいて,もしもの場合に採りに来よう。」
 華展の作品の見通しが立ったようで,妻も満足げである。

龍胆(りんどう) 庭の龍胆はどこから入ったものなのだろう。何かにくっついて来て根づき,次第に増えたものらしい。
 初夏,「ああ,今年も芽を出した」と見ていたのだが,年毎に増えて今年は2・30もの花が咲いた。
 花屋で売っているような何段にも咲く派手なものではない。1輪から数輪1段だけ2・3週間咲いて終わる。肥料もやらないのに横に横にと広がって,我が家の庭の晩秋を彩っている。
 そう言えば大山の桝水原では,広い原野の所々にこの龍胆を見かけた。

 この暖かさも間もなく終わり,寒さがやってくる。熱帯・亜熱帯の花木を中心にサンルームへのとりこみが忙しい。狭いところに100鉢くらいも入れるので,できるだけ切り詰めてお互い暮らしやすい環境にしてやらなければ。
 冬の到来を気にしながらの作業である。