そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.243  セイタカアワダチソウ

 このごろ秋の山野を黄色で埋めているのはセイタカアワダチソウである。アキノキリンソウと間違える人もあるが,それより少し黄色が濃くて,名前の通り背が高い。アキノキリンソウより派手で,いっぱいに群生しているから,見ている人の中から「わあすごい」なんて声も聞こえる。いつのころからなのだろう,昔は見られなかった景色だなあ,と思う。

〜〜 北米原産のキク科アキノキリンソウ属の多年草で,わが国には明治30年ごろにやってきました。当初は細々と切り花として用いられる程度で,あまり注目を浴びる存在ではありませんでした。〜〜(西良祐『花を贈る事典』)
 戦後,車文化の発達によって全国に種が運ばれ,繁殖力の強さから現在のような状態になったという。

 しかし,この花はずいぶん人気が悪い。その花粉がアレルギーの原因になるといわれることによるものだ。今も華道などでは使われないようだから,それは事実なのかもしれない。それ以来嫌われものの雑草としてそこらじゅうにはびこっている。まさに「にくまれっこ世にはばかる」の言葉通りだ。
 また,その繁殖力もものすごいもので,アキノキリンソウのしとやかさなどくらべものにならない。そんなところにも「よそもののくせにはばきかせやがって」と,嫌がられる原因があるのかもしれない。

 しかし,前述の西良祐著『花を贈る事典』にはちゃんと載っていて,花言葉は「生命力」とある。なるほど,この花にはぴったりの言葉といえよう。さらに,「理想的な街づくりで知られるイギリスのガーデン・シティーで大切に育てられている」とも述べられている。
 そういえばセイタカアワダチソウがはびこるのは,人が手をつけない土地である。いつも手入れをしている庭や畑には決して入ってこない。ということは,ずいぶん礼儀をわきまえている紳士的な(?)雑草なのかも知れない。

 さらに,この花は染織にも使えるという。

こんなにはびこっている花を全部摘みとって染め上げれば
野原も町もみんなみんな黄色の世界
いちめんのなのはな いちめんのなのはな
いいえ いまはもう秋
いちめんの セイタカアワダチソウ