そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.253  煙草(大学時代の同窓会2)(大学時代の同窓会2)

 学校での喫煙に対する風当たりが,最近だんだん厳しくなってきて,県内でも校地内での喫煙禁止の市町村が多くなってきた。
 先日もある学校を訪ねると,
「どうしてもやめられませんので。ちょっと失礼します。」
と,外に煙草を吸いに出る先生もあった。この町はまだ喫煙禁止とはなっていないのだが,本人としてはどうしても全国的な風潮に対して遠慮があるらしい。飛行機も全面禁止だし,煙草を吸う先生は肩身の狭い,不便な思いをしているようだ。

 さて,同窓会の参加者のうち男性は10名。現在も喫煙をするものはN君1名。大方のものが若いときには経験しているが,何らかの理由でやめてしまっている。中にはやめてまだ1週間というT君もいるが。
 私自身20歳頃から始めて,約20年間吸っていたのだが,40歳の頃ドクターストップがかかったのを機にきっぱりとやめている。
 しかし,不思議なもので,時々煙草を吸っている夢を見ることがある。20年以上一度も吸わない,欲しいとも思わないのに夢に出てくる。その話をすると,I君が「私も同じようなことを経験する」と前置きして,
「私の場合は,吸うようにすすめられている夢を見ることがある。」
と言う。

 それぞれが煙草の思い出を話し合うが,そのうちにみんなの声が,現在も続けているN君に集中する。
「この機会にやめた方がええよ。」
「まあまあ,そう言わずに吸わせないな。」
「じゃあまあ,それ1本だけだで。」
「今度の同窓会までにはやめるけえ。」
「宣言しただけ,守らんと,いけんど。」
 N君は,美味そうにというより,なんとなく面映そうな感じでタバコを味わっていた。

「じゃあ,私もちょっと。」
と,T君が煙草に火をつける。みんなが「ありゃありゃ」と見ていると,T君は吸うことをせず,すぐに消してしまった。
「なんでやめたあ。」
「いや,さっきの話を聞て,20年経っても夢に出てくるっていうのにびっくりして。」
 うーん,煙草の煙が化けて出る。それだけに怖い。