そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.258  芸術の冬見て歩き1(大学時代の同窓会2)

  退職して暇ができたものだから,近くで開催される展覧会の中から好きなものを選んで出かける。県立美術館は建設されないが,市町村立・私立の展示館やギャラリーは最近急に増えた。絵画,彫刻,書道,染織,陶磁器など実に多くの展覧会が行われている。中には興味をひかれるものもあるから,新聞の「展覧会案内」欄は気をつけてみることにしている。

 青谷郷土館では,開館十周年記念特別展として「柴山抱海展」を開催していた。隣町なので車で10分足らず。ここの長谷川館長は,数年前まで小学校の校長をしていたのでなじみである。入館前に事務室をちらっと見ると,向こうも私を認めて案内してくれた。入館者は私一人。
「忙しいでしょうに。」
「いや,わしは暇だ。職員は忙しいけど。」

 柴山抱海氏は私と同年代。高校の書道の先生をしていたが,一昨年退職して現在は芸術書道家。私の同窓生の稲垣氏はやはり高校の書道の先生だったが,教育書道だと言っていた。先日の同窓会で私が稲垣氏に,
「書道の方で忙しいだろう。塾もやっているのか。」
と尋ねると,
「塾は少し。退職したということであれこれ使われることが多くて。」
と言っていた。「道」と名の付くもの格が上がればそれなりに金もかかるらしい。

 長谷川館長によると柴山氏も同じようなことらしい。つい最近もパリで書展を開催するなど幅広く活躍しているように見えても,「芸術は金にならない」ようだ。
「そんなに作品がどんどん売れるわけではないしなあ。」
 もっとも柴山氏には住職という別の収入源がある。
「その方が儲けは確実だらあで。」

 10年前の開館記念に揮毫したという「照」は,232×357の額装の見事なもの。紙も中国のものとか。滲みが素晴らしい。書画,有田焼などにも手を広げておられるらしく,その作品も展示されていた。余裕というか遊びも感じられる作品もある。
 彼の作品をまとめて見る機会はなかったが,なかなかよかった。

 私も抱海氏の色紙を1枚もらっている。30年ほど前に勤めていた学校の校長がもらってきたものだった。額に入れて客間に掲げている。