そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.261  冬の海岸散歩(大学時代の同窓会2)

 去年の12月,詩の仲間と浜村海岸を歩いたことを思い出した。
〜〜 少し時間があるので,海岸まで出る。きょうはいい天気になったが,週初めの風雪の名残で日本海は荒波が打ちつけている。ゴミが打ち上げられ,切れ切れになったクラゲも散乱していた。これが日本海だ。〜〜(No.123より)
 今年いちばんの冬型の気圧配置となって寒い日だが,一人で歩いてみるか。厚手のコートを羽織って出かける。

 風が吹きつけ砂が積もる国道の横に車を置いて,海岸に下りる。目に入るのは無数のゴミだ。プラスチックやガラスのビン,発泡スチロールの塊,漁船のものと思われる電球,使い捨て(こんな呼び方をするから捨てるのだ)のライターなど波打ち際から少し上がったところに打ち上げられている。
 漁具のゴミよりも生活用品や飲料水のビンが圧倒的に多い。文字の読み取れるものを見るとハングル文字のものも多い。

 この海岸は住民の手によって毎年2回の清掃をしている。しかしこのありさまだ。日本海の波は白く泡立ち,荒々しく長尾岬に打ちつけ高く上って行くのが見える。その景色はちっとも変わらないのに,浜は年々汚れていく。
 木切れなどは非常に少ない。クラゲ(エチゼンクラゲか)の切れ端があちこちに散らばっている。

 植物はどうだろう。所々に緑の葉が見えて,中に穂が立っている群落が見える。あとで小沢見海岸での自然観察会の記録集を見たら「ハマニンニク(テンキグサ)」らしい。
「てんきぐさ 北アメリカから東シベリアの海岸砂浜に分布し,日本では北海道と本州北部の砂浜に普通に群生する多年生草本。その粉緑を帯びた草状がニンニクに似たところがあり,ハマニンニクともいわれるが臭気はない。(以下略)」(平凡社『世界大百科事典』)小沢見海岸では何を勉強していたのだろう。
 海岸付近で緑のものはそれくらいしかない。少し上にはハマゴウの根がもつれるように空中に突き出している。枯れたように見えるが,こうして寒さをしのいで,春になると緑の芽を吹くのだろう。

 生き物は荒れ狂う自然の中でひっそりと耐えているのに,人間は自然を汚し壊し続けている。