そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.274  マツクイムシ大学時代の同窓会2)

 ここ数十年来各地で起こっているマツ枯れの原因が,マツノザイセンチュウという,ごく小さなセンチュウの寄生によって起こるということがわかったのは,30年くらい前のことだそうだ。(別冊NHK趣味の園芸「これだけは防ぎたい病気と害虫120」より)
 そのセンチュウの運び屋としてマツノマダラカミキリが重要な役割を果たすということもわかり,このカミキリムシの駆除を行って蔓延を防ぐことをしている。いわゆる空中散布によって山林に駆除剤を散布する。

 我が家の松は植木屋さんが年2回くらい駆除剤を散布しているので被害にあっていないが,すぐ前の家の松は数年前にやられた。マツクイムシにやられると,気がついたときにはもう遅い。見る見る葉が枯れて,全身枯死してしまう。近くの松にも広がっていくので,切り倒して焼いてしまうしかない。

 5年ほど前に勤めた学校には見事な松が10本ばかりあった。校区の人が言う。
「これはええ松ですけえ,大事にせなあいけませんで。枯らしたら首がとびますで。」
 学校のすぐ近くには神社があり,その参道にも立派な松があったが,全部マツクイムシの被害にあい,なくなっていた。。
 学校の松と言っても,公立学校であるから町のものである。私と用務員で肥料をやったりまわりの草を取ったりはするが,消毒などは町の管理である。
 1年目,少し葉の先が枯れていることはあったが,
「これはマツクイムシではなさそうだ。」
と,みんなが言うので普段通りの管理をしていたが,別にどうということもなく年を過ごした。

 2年目の夏。校門付近の2本が少し葉の色が悪く元気がない。おかしい。樹木医に見てもらう。葉の様子,枝を折り取ったり根を切り取ったりして調べた結果,「マツクイムシ」との診断が出た。
 2本の松は早速切り倒され,処分された。私は,首にはならなかったが,ちょうど学校統合を控えていた関係で,別の学校へ転勤になった。

 正月前,生け花に松が一枝ほしいと妻が言うので近くの山を歩いてみる。ない。いや,あるのだが全部枯れている。いや,枯れている木はすべて松,と言ってもいい。なんということだ,これほど被害が深刻とは知らなかった。
 海岸線の松はそれでもまだ緑をたたえていて,「白砂青松」を保っているが,これもいずれ危ないか。どうしてこんなことになってしまったのだろう。今のままの駆除方法で本当によいのだろうか。