そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.277  クレオパトラは小巻さん大学時代の同窓会2)

 演劇鑑賞会1月の例会は,『アンとニーとクレオパトラ』(エイコーン),クレオパトラ役が栗原小巻とあってはこれは見逃せない。我が家では一人の入会にしていて,今度は私が見る番になっている。何があっても見に行くぞと,と思っていたら,
「行けない人があるので代わりに見てください。」
と,国森さんが券を持って来られた。これで妻と二人で鑑賞できることになった。
 例会の会場は普通鳥取市民会館となっているが,今回と次回は市民会館が改修中ということで県民文化会館で行われた。ここの方が駐車場が広く,我々には都合がよい。夕食を会館のレストランでとって時間待ちをする。

 クレオパトラ。古代エジプトのプトレマイオス朝最後の女王(在位51〜30BC),厳密にはクレオパトラ7世。ジュリアス・シーザー(カエサル)の支持(寵愛)を受けてプトレマイオス13世とともにプトレマイオス朝の共同統治者となる。シーザーの帰国後,クレオパトラは賓客としてローマに赴くが,シーザーが暗殺されるとエジプトに帰り,プトレマイオス13世を殺して事実上の女王の座についた。
 時の古代ローマの三巨頭の一人アントニー(津嘉山正種)は,彼女の美貌と賢さのとりこになって愛人関係になる。
 しかし,東方ヘレニズム的政治を進めようとするアントニーと,西方ラテン的世界をめざすオクテ−ヴィアス・シーザー(森下哲夫)の対立は決定的なものになり,アクティウムの海戦でアントニーとクレオパトラは敗れる。アントニーは自ら命を絶ち,クレオパトラは毒蛇に胸を噛ませて死ぬ。

 シェイクスピアの大悲劇を要約するなんてとても私にはできない(いや,読むこともできない)が,こんな内容だろうか。(演劇ガイドや百科事典で調べてみた)
 この劇を見るには,以上のような簡単なことでも歴史の知識があった方が,わかりやすいと思う。せりふの言葉もちょっと時代がかって難しく,慣れるまでに時間がかかるからだ。単なる不倫の劇ではなく,大きな歴史の動きが語られているのだから。

 しかし,開演から終演まで約3時間(休憩15分を入れて),たっぷり演劇のよさを味わうことができた。
 栗原小巻,演技も素晴らしいがあれだけのせりふを覚えるなんて,たいしたものだ。たしか妻と同じ位の年齢と思うが,なかなかどうして,若さと美貌は保たれたままだ。化粧や衣装以上の何かがそれを支えているように思う。
 そういえば2年ほど前に帝国劇場で見た森光子は,80歳を越しているとはとても思えないしっかりした動き,せりふで主役を演じていた。また,美しかった。舞台人には年齢がないのかもしれない。

 舞台の大道具は変えないで場面が変わる,こんな演劇も初めてだった。エジプトからローマへ,またエジプトへ。登場人物が変わるだけで場面が変わる。さらに,現代の観光の様子まで最初と最後に取り入れて,そこにも栗原小巻や津嘉山正種を観光客として登場させて,観客にサービスたっぷりの演劇であった。
 4千円ほどでこんな演劇が見られるのだからうれしい限りだ。

 外に出ると夜の9時半過ぎ,雪が降りしきっている。今冬何度目かの積雪になりそうだ。