そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.279  あわや火災大学時代の同窓会2)

  演劇鑑賞会が終わって,帰宅が遅くなってしまった。夕食は済ませていたので風呂に入って寝るか。部屋に入って明りをつけ,ストーブに火を入れ,テレビをつけようとしていると,妻が呼ぶ。
「Tさんが来られていて,何か家が焦げ臭いようなので見てほしいって。」
「ええっ,それはたいへんだがな。」
 4・50メートル離れた家まで掛けつけると,確かに焦げ臭い。Tさんは現在一人住まい。テレビを見ていたが,何かおかしいので誰かに見てもらおうと外に出てみたが,なにしろ夜の10時を過ぎている。通りには誰もいない。近くの家は真っ暗(実は停電していた。)。ちょうどそこに私たちが,演劇鑑賞会から帰ったというわけだった。

 玄関を入ると確かに臭いがする。
「電話が途中で切れてしまった」「玄関灯が消えた」などを聞くと,多分電気関係だと思われる。家の中の電気器具,コンセントを見る。初めて入る家なので様子が分からない。懐中電灯で探してまわるが分からなかった。

 突然廊下の蛍光灯が煙を吹いた。煙が家中に広がる。
「ええっ,どうしたらいいの!」
 脚立を出してもらって蛍光灯を天井コンセントから外す。これは私ではどうにもならない。ずいぶん遅い時間だが,電気関係の仕事をしている近所のSさんを呼びにTさんは走る。さらに部屋の蛍光灯が燃え出した。これもあわててコンセントから引き抜く。というところでSさんがとんで来た。
「これはえらいことだ。ブレーカーを全部落とさんといけん。高い電圧がかかったらしく,このあたりは停電している。電気工事の人が今調べているところだ。」

 天井なども調べて,立ち込めていた煙を出して少し落ちついて,
「もう大丈夫です。」
とのTさんの声でひとまず引き上げる。それでも心配で,夜中2・3度そのあたりを巡視した。
 翌日見舞いに行く。電気器具がいくつか焼けたが,それでも大事にならなくてよかった。どうやら電気工事のミスらしい。修理代は電気工事の会社が出すという。

 こんな事故を経験して2・3日後,勝見の消防訓練があった。消火器の使い方を中心にした訓練だった。
 気高消防署の人に指導してもらって,実際に消火器で火を消す練習をする。家の外での練習だから落ち着いてできるが,思いがけないときに家の中で,ということになるととても平静ではいられまい。
「とにかく落ち着いて,深呼吸一つしてから行動してください。」
 消防署員の指導が,また先日の事故を思い出させた。