そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.284  水尻池(2月自然観察)

 2月の自然観察会は,気高町の水尻池での野鳥観察だった。水尻池は,「かつては日本海の入り江であったものが北方を砂によってふさがれてできた潟湖である。(中略)1915 (大正4) 年に11ha,さらに1921年までに13ha,計24haを干拓,新田が開発された。(中略)1981年(昭和56)から減反政策を受けて稲作を取りやめ,廃水を中止したので年中池のままの状態に戻った。白鳥も飛来し,休猟区に指定された。」(新日本海新聞社『鳥取県大百科事典』)

 各地に春一番が吹き荒れたこの日,水尻池付近も荒れ模様だった。奥沢見で池を見る。
「いつもはこの近くにたくさん見られるのですが,今日は向こうの方にいます。これから車で行きましょう。これだけの人数の人が歩いて行くと飛び立ってしまいますが,車なら大丈夫です。」
 清末先生の言葉で,対岸の方へ移動。なにしろ10台近くの隊列,私は3台目。前の車について走っていて,ひょいとミラーを見ると後続がついて来ていない。100mばかり後ろで降りて観察している。でも,そんなに広い道ではなく,バックもできない。

 しようがないこのあたりの観察でもするか。と見ていると,近くの土手の刈れた葦の葉を渡るように羽ばたく小さな緑色の鳥が見えた。「これはもしや」と双眼鏡を取り出す。葦にとまっている姿は,私の記憶に間違いがなければカワセミ。
 後続の車がやってきて移動しなければならなかったので,小鳥はどこに行ったかわからなくなってしまったが,後で先生に聞くと「カワセミはこの辺りにもいますよ,間違いないでしょう。」ということだった。

 少し坂を上って池を見下ろしながら観察。
「今見えている群はマガモです。群が3つにわかれているでしょう。あの全体で大きなひとつの群なのですが,岸に近い所の群は餌は豊富ですが,危険も多いのです。しかも,危険が迫ってもわかりにくい。
 それに比べて,岸から離れている群のマガモは,危険が迫っていることをいち早く知ることができる。だから,そのことを岸に近い方の群に知らせます。
 そのように役割を分担し合っているものと思われます。」

「みんな風のほうに向かって浮かんでいるでしょう。風を後ろから受けたのでは飛び立てません。なにかあったときにすぐに飛び立つことができるようにです。」
 山下清三の『ひばり』という詩を思い出した。
  北風の日は,北風にむかい/南風の日は,南風にむかい,/はばたきながら,/うた
  いながら,/空へのぼってゆく,ひばりよ。/空高くのぼってゆくためには,/風に
  たちむかって,/とばねばならぬことをしっている君よ。(以下略)

 しばらく観察して,次は日光池でコハクチョウを観察することになったが,天気は定まらず,ときおり激しい雷雨。ついに途中の喫茶店でコーヒーを飲みながら清末先生の講義を聞いて,この日の観察会は終わり。
 日光池のことは次の機会にしよう