そらのやま「通信」     Yukito Shimizu空の山通信11


No.29 /動物愛護

 ペットブームと言われるが,我が家にはペットと言うほどの動物はいない。私達二人暮らしで,これまで勤めの関係から昼間はほとんど留守勝ち,動物を飼うことはできなかった。
 
 それでも,十年以上まえになろうか,子猫を1匹飼っていたことがあった。それは,次男が来年の春には家を出るというとき,「お母さんが寂しくなるから猫でも飼ったら」と勧めたからだった。妻の担任している子どもが教室に持ち込んだ子猫だった。たいしてきれいでもない子猫だったが「うらら」と息子が名づけた。名前は当時のテレビドラマかアニメのヒロインだったか。妻も私も次男も結構かわいがって,うららもなついた。食べ物も贅沢で,キャッツフードなど全く食べず,毎日魚の煮付けを準備した。特に大好物はうなぎで,冷蔵庫に入っていても見破るほどだった。そのうえ蚤を体中に繁殖させ,その退治に体中を洗ったり,薬を買って来たりと家中が振り回された。
 
 そのうららが半年ほどしてふいにいなくなった。多分どこかの野良猫とくっついて遊んでいるのだろうと,それでも夜は入り口を少し空けて帰りを待ったのだが,遂に帰らなかった。それから一週間ほどして近所の人が知らせてくれた。「お宅のによく似た猫が血を吐いて死んでいました。きっと毒入りの何かを拾って食べたのでしょう。かわいそうだから埋めてやりました。」
 人間に飼われて,野生の防衛本能を失い,毒の入ったものを見抜けなかったのかと思うと同時に,毒入りの食べ物で殺すとはなんと卑劣な人間がいるものだと思ったりした。

 最近都会での毒による動物無差別殺害事件が取り上げられていた。その気持ちもわからぬではない。我が家の家のまわりにも数匹の野良猫がいて,散歩コースか巡視コースに入っているらしく,毎日ほぼ決まった時刻に歩いて通る。早朝などは畑を徘徊し,特に新しくできた畝をかき回す癖があるため,苗物などに多少の害を被ることもある。しかしいくらなんでも,毒殺までは考えない。
 昔,家で飼えない子犬や子猫を段ボール箱で川に流すことは,多くの地域に見られたものである。もちろんこれも河川の環境汚染だし,動物愛護の立場からすれば罪ではあろうが,すくなくとも無差別殺害ではない。飼い主の手を合わせる姿が目に浮かぶだけは救いがあるような気がする。

 とにかくそれ以来我が家ではペットらしきものは飼わない。飼っているといえば,外に置いている石臼に金魚1匹と,睡蓮を植えたプラスチック箱に金魚4匹,メダカ数匹。いずれも夜店の金魚すくいやもらいもので,蚊の発生防止を目的としている。(2002.5.7)