そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.292  焼き物の里を訪ねて(北九州)4

 ホテルでもらった地図によると,川古大楠公園は国道から10kmばかり北に入ったところのようだし,飛龍窯はそこからさらに5qほどの所にあるらしい。目印になるものが余り書いてない地図なので,バス停で降りて確かめるとすぐ前に案内の看板があった。
「武雄の大楠」は武雄神社の御神木,根元の12畳敷の空洞に天神様が祀られている。樹齢3000年を超えるといわれ,高さ30m,根回り26mは全国第6位の巨木だという。祠の前の立て札には,「日本三傑」と書いてあったし,ホテルでは世界一とも言っていたが,どれがほんとうやら。
 しかし,確かに大きい。観光バスで来たお年寄りのグループもびっくりした顔で見上げていた。

「この『飛龍窯』は昭和二十年代初めまで使われていた登り窯を参考に建設いたしました。全長二十三メートルの階段状連房式登り窯で,胴木間と四袋のの焼成室から成っています。最大の焼成室は奥行き8.9メートル幅3.8メートル,高さ3.4メートルの大きさとなっています。この登り窯では一度に約12万個の湯飲みを焼成することができます。」
                            (飛龍窯説明板より)
 世界一といわれるこの窯では,年1回全国から募集した作品を焼成するイベントを開催しているという。
 窯の前の広場で,薪を作っている人が「こんにちは」とあいさつをしてきた。

 陽光美術館(慧洲園)はホテルの隣にあって,経営者が同じらしい。このホテルに泊まる人には入場券のサービス(入館料1500円)があった。ホテルと繋がっている。夕方5時5分前に着いて入り口で,
「まだ入れますか。」
とたずねると,
「美術館は5時までですが,庭園はいつまででもいいですよ。」
 美術館には東洋翡翠,陶磁器の名品が展示してあるというが時間がない,ほとんど見ないで庭園へ。
 慧洲園は御船山を借景に「池泉回遊式」の日本庭園である。滝や岩の美しい池の周りを回ってみる。マンリョウが赤い実をいっぱいつけて大きく延びているし,紅梅・白梅が春を告げている。斜面の茶畑も見事だ。さくらやつつじ,秋の紅葉も見事だという。
「お撮りしましょうか。」
と,ホテルの従業員らしい人が言う。そうか,この旅行中二人そろって写真に入ることがなかった。海外旅行をしていてもそんなことが多い。三脚を使って写すほどでもないし(三脚を持っていないことも多いから),などと考えているとついつい一人の写真で終わってしまう。この写真は,そういう意味では珍しいもの。

「唐津の焼き物を買ってないからここで買おう。」
「それがいい。」
 帰路につく朝ホテルの売店で土産を求めた。先にも述べたが,唐津焼はこの地方広い範囲で行われている焼き物で,ここ武雄にも多くの窯元がある。手ごろな湯飲み茶碗を一つ買って帰路につく。これから一日車の旅である。(このシリーズ終わり)