空の山通信  清水行人


隣の国

 全校朝会の講話は,私の大事な仕事の一つである。担任のない校長が全校児童の前に立って話す数少ない機会である。職員に話すことも大切だが,子どもたちに直接話しかける最も重要な時間と私は考えている。1月の講話は,「隣の国」と題して話した。

 ・・・・「隣の国」と言えば「韓国」と多くの人が答えるでしょう。先生方の中にも韓国に行った人はたくさんあります。私は行ったことがありませんでした。この間の冬休みに,12月の終わり3日間という短い日程でしたがソウルを中心に見てきました。今日は,その中で強く印象に残ったことを二つお話します。

 一つは,ソウル市内にある刑務所でした。いや,今は刑務所として使われてはいません。昔の刑務所を博物館として残し,見せているのです。今から50年以上も前,日本は朝鮮を自分の国のものとして治めていた時代がありました。そのころつくられた刑務所です。そしてそのころ、日本のやり方に反対するする朝鮮の人たちを捕まえてその刑務所にいれたのです。厳しい取調べをしたり,拷問をしたり,死刑にもしました。そんな日本人のやり方を決して忘れてはいけないと,刑務所を博物館として残したのです。私たち日本人としては,加害者としてつらい思いをしながらみるところです。韓国の人が私たちを見て,「日本人が見に来ている」と後ろ指を指すかもしれません。でも,決して目をそらしてはならないと思います。間違ったことをしていた日本人の子孫として,反省することははっきり反省し,新しい国・人と人との関係を作らなければならないと思います。

 もう一つは,北朝鮮・朝鮮民主主義共和国と大韓民国との国境,停戦ライン近くの見学でした。朝鮮はもともと一つの国なのですが,50年くらい前,北と南に分かれて激しい戦争をしました。その戦争は今も終わっていません。しかし,戦争をすこし休みにしようと言う話し合いがされて,そのとき決められたお互いの国の境が停戦ラインです。その線から攻め込んではいけないということです。現在は北朝鮮と韓国が少し仲良くしましょうと話ができるようになってきていますが,停戦ライン付近は自動小銃を持った兵士が厳しい警戒をしています。

 展望台から北朝鮮を見ることが゜できました。500メートルほどしか離れていませんが,そこにはお互い近寄ることのできない,朝鮮の人たちの悲しみや苦しみを感じることができました。

 

 僅か3日間の旅行でしたが,日本にいちばん近い国の今と昔,朝鮮の人たちの思いを感じることができるよい旅行でした。