そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.306  鷲峯神社・布勢の名水

 4月の自然観察会は気高郡で行われた。水尻池での観察もあったが,雨のためあまりいい印象でなかった。今日は晴れた。祭りの準備をしていてうっかり遅れそうになったが,3分遅れぐらいですんだ。なんと19名の参加。最高の参加者だという。
 先ず鷲峯神社での観察。神社境内付近の駐車場はあまり多く入らないので,5台くらいに分乗して行く。私は道をよく知っているので先頭を走る。神社までは狭く急な坂道で初めての人はびっくりしている。

 ここの宮司は,私が現職時代に仕えた井上さん。前日,
「こんな会を神社付近で持ちますのでよろしく。」
と伝えておいた。
「面白いものはないで。」
と言っておられたが,なかなかどうして清末先生の目で見ると珍しいものがいっぱいらしい。車から降りてすぐ,足元に群生して紫の花をつけている植物に目をつけた。私のような素人にはすべて「草」だが,先生にはそれぞれ個性ある植物として見える。
「これはヤマエンゴサクです。春を代表する花ですが,半日陰で適当な湿り気があるところにしか育ちません。」
「ミヤマカタバミ。カタバミは,葉のつき方がアンバランスになっているところから『片方の葉を誰かに食べられた』とそんな名前がつきました。」
「テングスミレ。鳥取県が日本の自生地として最も西の端,南限ということになります。」
「ゼンマイ,語源は『銭舞』,銭がくるくると舞っているように見えるところからつけられた名前です。」
 駐車場に下りる途中にイチリンソウを見つけた。まさに一輪,けなげなに咲いていた。(アズマイチリンソウの反対側にあった)

 布勢の清水は県の名水に選ばれている。
「殿部落の南部,下布勢というところに鎮座されている布勢平神社境内の岩の下から,清冷な清水がこんこんと湧き出ている。(中略)この清冷な清水がいつ発見され,いつごろから利用されたかわからないが,亀井武蔵守茲矩がその清冷さ氷のごときを称讃して,傍に凉亭を設け,夏には日ごとに納凉したというから,かなり古くから郷人の飲用,その他に利用されたことは確かである。」(『気高町誌』より)

 明治42年にはこの清水を利用して簡易水道が敷設されている。もちろん現在も愛用している人は町内外に多い。車の発達した現在では,通りかかって飲むことより,容器を持参して持ち帰る人も多い。中には大量に持ち帰って,営業に使っている人もあるらしく,その場合は区長に申し出るよう立て札があるが,断りもなく勝手に持ち帰ってしまうという。
 この付近でも,カラスノエンドウ,スズメノエンドウ,アザミ,クコ,クサノオウ(毒草),ナズナなどたくさんの植物を観察した。
 透き通った名水に鯉が気持ちよさそうに泳いでいる。