そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.317  東京行進曲4

 どじょうを食べ終わると,浅草演芸ホールである。ここは,入れ替えなしで昼ごろから夕方まで落語や漫才などをやっている。ただし,われわれは時間が限られているので,トリまでいることはできない。寄席のさわりを見るだけだ。2階席から柳亭楽輔など3人ばかり見て,外に出た。

 自由時間ということで,後は水上バスの乗り場に行くだけ。
「この近くで江戸職人伝統工芸展というのをやっているらしい。」
とバス会社発行の案内図を見ながら妻が言う。工芸品などを売っている店の2階でやっているらしい。店の人が「どうぞ」と言うので2階に上がる。職人さん達が浮世絵刷りや独楽,凧などを実際に作って見せるというもの。
 根付職人がいる。
「何年生まれ?」職人が妻にきいている。「19年。」「ああ,そりゃあ今年の干支だよ。是非買っていきな。」「それじゃあ還暦記念にしようか。」というわけで根付一つ,本人の小さな土産。

 店を出てぶらぶら,浅草寺の本堂から仲見世通りを人にもまれるように抜け雷門を出る。ガイドさんによると,もともとは「風神雷神門」なのだそうだが,気の短い江戸っ子は真中だけとって「かみなり門」としてしまったのだそうだ。そうだな,「ふうらい門」じゃあ風来坊みたいでおかしいし,「ふうもん」もなんだか抜けたみたい,「かぜもん」では語呂がよくない.(これは私の解釈)。やっぱり「雷門」かな。

 隅田川にかかる吾妻橋の近くに水上バスの発着所はあった。浅草から浜離宮を経て日の出桟橋まで,40分の船からの東京見物である。このコースは12の個性的な橋が見所という。浅草から,吾妻橋,駒形橋,厩橋,蔵前橋,両国橋,新大橋,清洲橋,隅田川大橋,永代橋,中央大橋,佃大橋,勝鬨橋と隅田川をまたぐ橋の展覧会である。勝鬨橋は,開閉していたことでよく知られているが,1回の開閉で膨大な費用がかかるということで,今後も行う予定はないらしい。
 船内放送で説明を聞きながら12の橋をくぐり抜けたが,船尾のデッキでは風が強くよく聞き取れない。
 日の出桟橋からバスで東京駅へ。
「ここからホテルに帰るほうが近いんじゃない?」
と妻は言うが,浜松町駅まで歩くのがかなりの距離である。観光バスは途中では止めてもらえないから東京まで帰るのが無難。

 夕食は昨日偵察しておいた表参道駅付近の中華定食。今日もよく歩いた。だいたい都会というところはよく歩かなければならないようにできている。