そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.319  東京行進曲6

 三日目最終予定「四季劇場」観劇。
 ミュージカル「ユタと不思議な仲間たち」(企画・演出=浅利慶太)は,東北の山奥の村が舞台。父が亡くなり,東京から母の故郷に転校してきたユタ(勇太)は,村の子どもたちのいじめにあい,ひとりぼっちである。そのユタを励まし,生きることの素晴らしさを教えてくれる「座敷わらしたち」との出会い・心のつながりを表現したオリジナルミュージカルである。

「座敷わらし」。『折口信夫全集』(中央公論社)には次のように述べられている。「古い家には枕がへしと言ふ事がよくある。又雨が降ると,縁側をおぼろげな姿の子どもがぶるぶる慄へながらながら通る事がある。又或家には,顔の赤い河童の様な子どもが出て来たりする。そして家運が傾く頃には出て行って,その家は亡びてしまう。」(第15巻P256「座敷小僧の話」より)

 ミュージカルの中の座敷わらしは,生まれて僅かしか生きることが許されなかった,生まれることさえできなかった子どもたちの亡霊として登場する。この悲しい過去を背負う座敷わらしたちと,現代の「孤独」に生きるユタ。心の交流・励まし,教えが「わらし」からユタに伝えられる。圧巻はわらしたちとユタが空を飛ぶ場面,これはすごい。
 しかし,だんだん村の生活に慣れていくユタは,座敷わらしとの別れをしなければならなくなる。東北地方に伝わる家運の盛衰に関る神様(あるいは妖怪)とは違って,ユタの自律をテーマとしている。

「ライオンキング」は是非見たかったが,このミュージカルもとてもいい。「ざしきわらし」が現代に生きている。そうであったらいいと思う。子どもたちをざしきわらしが守っているんだと。でも,今の子どもたちはユタみたいな素直な子ばかりかな。
 カーテンコールがすごかった。何度も何度も幕が閉じ,開き,また閉じ,開いた。
 私の隣の席は空いたままで,人気の上では「ライオンキング」に負けているとしても,「ユタと不思議な仲間たち」はテーマの面では「ライオンキング」より上かもしれないなどと思ったりした。(見てないのを評価はできませんが)。

 十分満足して劇場を出た。今日もいい天気だった。東京の旅3日間は,思いつきで計画したものだったが,充実したものになった。よく歩き,よく見た。人間もいっぱいいるが,まだまだ見るところがいっぱいあるよ,東京は。
 また来よう。