5月の自然観察会は,岩美郡国府町のアトリエ小学校での植物画教室だった。
ここは,国府町立成器小学校だったところである。2002(平成14)年に谷小学校・大茅小学校と統合して国府東小学校が新しく建てられ廃校となった。卒業生達は,校舎そのものもなくなってしまうのを惜しんだ。東京在住のイラストレーター,本日の講師福田典高先生もその一人だった。
「小学校は故郷そのもの。消えてなくなっては寂し過ぎる。残せば故郷への恩返しにもなる。」(2002.11.27付「朝日新聞」より)と帰郷,ここをアトリエに変えて,一般の人にも開放した。参加者は好きなだけ描き,福田先生の指導を受ける。
談話室でコーヒーを飲みながら福田先生のそんな話を聞く。机・椅子は子ども達が教室で使ってきたもの。みんなが懐かしがって座る(もっとも私達の頃のものは,ふたを開閉するシンプルな机だった)。
廊下にはたくさんの絵が貼ってある。元校長室はアトリエになっていて,一人の女性がコンピュータに向かっていた。コンピュータ・グラフィックでもしているのだろう。隣の元職員室が絵画教室の部屋になっている。
「初めはちょっと遊びましょう。たいていのものは丸と三角で描けます。皆さんも落書きをしてみてください。蜘蛛は丸を描いて,横の縞縞を描いて,下に半分の丸,足をスイスイと描いて,上から一本糸を垂らすとできあがり。」
「猫でも,犬でも,鶏でも,猿でも,アンパンマンでも,サザエさんでも毛虫でも描ける。」
真似して描いていくと,なるほどそれらしいものが描けるから不思議だ。
「さあそれでは絵手紙にかかりましょう。」
机の上にはいろいろな季節の花が置いてある。今日の課題はこれをはがきに書いて絵手紙にすること。アザミ,カワラナデシコ,シラン,オダマキなどこの時期花には事欠かない。私の前にはピンクのミヤコワスレとギボウシがあった。
「はがきを取って8Bの鉛筆で描いてください。」とはがきが配られ,鉛筆が渡された。
私はミヤコワスレを描くことにした。まず,花弁を見て線で表す。よく見ると,同じように見える花弁も1枚1枚形が違い,大きさも微妙に違う。もちろんぐるぐると取り囲んでいるのだから,見る方向は全部異なる。中には妙にそり返っているのもある。「手前の花弁はどう描けばいいのだ」などとひとり言を言いながら,それでも茎に移り,葉を描く。気づかないような虫食いがある。途中で垂れて,裏が見える葉もある。
二輪描いたところで先生が来られた。
「この上にもう一輪描いた方がよさそうです。」
それが終わると着色。絵の具も筆もパレットもすべて準備してある。蕊をどう描くか,茎の色と葉の色の感じの違い,葉の表と裏の違いなど,普段なんとなく見ているものの中に多くの発見があった。最後に先生が少し手を入れられる。
「少し茎を伸ばして伸びを持たせましょう。ぼかしをつけてぜんたいにふんいきをだすようにしましょう。」これで,絵手紙用のはがきが完成した。誰に出そうかなあ。
|