そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.325  退公連

「退職公務員連盟」という団体がある。
 去年の10月ごろだっただろうか。先輩校長のTさん、Nさんとある会で話が出た。
「なんと,清水さん,退公連に入ってもらえんかいな。」
 そのとき、私は別の会のことを考えていた。
「ええ,確かそれはこの間会費を振り込んだと思うですけど。」
「あ,そうかいな,そらあよかった。」
 そのときはそれで終わった。後で調べてみると,どうも別の会費を振り込んでいたのを勘違いしていたらしい。

 さらに一月ばかりして,別の会合でその先輩と出会い,またその話が出た。ところがその会の音響効果のせいで,彼らの話がほとんど聞き取れない。退公連に加入することは別にどうということはないので,話しかけられることに対して,
「ああ,いいですよ。」
と言っておいた。ところが,一仕事増えることになってしまったのである。彼らが話しているのは,私に世話役をしてほしいということだったのだ。私が「いいですよ」と言ったものだから,断りきれなくなってしまった。早速次の月から文書配りという仕事が始まった。わたしの地域会員23名の世話役である。

 月に一度文書を配るのは,家の位置を覚えさえすればそれほどのことではない。1時間もあれば郵便受けに投げ込んで終わる仕事だ。たまに会員本人や家族の人と出会って,「ご苦労さんですなあ」とか「お世話になります」と感謝の一言を聞くぐらいのものである。
 年度が変わって役員総会があり,集金の仕事が入ってきた。これがたいへんなことだということが,しばらくしてから分かった。とにかく人がいない。

 1日目。近くの7軒ばかり回ったが,集金できたのは一人だけ。
 2日目。少し広げて12・3軒回ってやっと半分。
 3日目。これまで留守のところを午前と午後の2回訪問。ようやく残り二人にこぎつけた。どちらも入院しておられるらしく,家族から集金するしかなさそうだ。
 4日目。たまたま息子さんが家に帰っておられるところを訪問。うまくいった。あと一人。

 勘違いから始まって,なんだかたいしてやる気もなかったのに,ずいぶん面倒なことを引き受けてしまったものだ。しかし,全然知らなかった人でも,いっぱい話しかけてこられる。退職していろいろなことがあって,話したいことがいっぱい溜まっている人もあるのだろう。こうして訪ねて回るのもボランティアみたいなものか。