そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.34 /入院雑記2 ホームページを守れ

ベッドで天井を見てすごす。何もすることがない。いや,何もできないのだ。動くと痛む。咳をしても,あくびをしても,笑っても痛む。それでもベッドに横になって少し落ち着いた。妻が言う。
「ホームページどうするの。」
4月には,ほぼ一日おきに更新をしてきた。何人の人が読んでいるかは知らないけれど,ここで一か月休めば,おそらく大方の読者は去っていくだろう。それも仕方ないか,とも思う。
「私がしようか。」妻が言う。「あなたが原稿さえ書くなら。」
「今はその気にならない。」私はそう言って,その日は眠った。

いや,実際には痛くて眠れなかった。眠られぬままに考えた。これはやってみる価値がある,と。妻はホームページの文書作成,更新については,これまでまったく関わろうとしなかったし,知識はゼロだけれど,何とかできるのではないか。私は原稿にする種は現在持ちあわせていないけれど,これまで書き続けてきたことを考えれば可能だ。可能なことは試してみることだ。
「やってみるか。」

原稿をベッドで天井に向かって書くことは難しい。今までパソコンで書いていたときは,1ページの量は画面で見えたし,削除も追加も入れ替えも,自由にできた。紙に向かうと,そうはいかない。しかも,この姿勢では並べてみることができないなど,物理的な不便さも大きい。
まあ,A4一枚程度何とかなるだろうと,予想されるテーマに最小限必要な本を持ってきてもらうよう頼んだ。

次はホームページ更新について,妻にどう教えるか,だ。病室にはパソコンがない。画面を見ながら「ここをクリック」「右クリックしてメニューの中からこれを選んで」とできれば簡単なのだが,それができない。「ここ」も「これ」も通用しないのだ。
ベッドを離れることのできない私は,電話もできない。携帯電話は病院での使用はよくない。

仕方がないので私ができるだけ詳しく説明し,それを妻が書き留めて家に持ち帰り操作してみる,そうするしかないということになった。更新のときの操作を思い出し,画面を浮かべながら説明する。
「デスクトップ右上にあるホームページ編集のページを開く」「ファイルをクリック」「メニューの中から<最近使ったファイル>をクリック」「前回更新のページ記号をクリック」「ページが出てくる〜まずタイトルを変える」用語などの分かりにくいところ(実はこっちも分からない)は,何とか分かる言葉に置き換えて説明。
保存,リンク,接続などについて1時間あまり説明し,妻は原稿とメモを持ち帰った。

翌日,「リンクで失敗した」と言うので見ると,リンクを貼るところの「No.」が「NO.」になっている。「文字1字の違いでも受け付けないから」と念を押す。さらに翌日。「できた,ばっちりだ。」「たった2日でできるなんてたいしたもんだ。」

写真の挿入も成功。目次のテーブルの追加については,見舞いに帰ってきた長男にも教わって分かったようだ。長男は,「これ使ってみたら」と,小型のノートパソコンを貸してくれた。私の原稿書きもこれで楽になる。
「さあ,どんどん書いて。」と妻。そんなに書けないよ。(2002.5.14)