ラン科の多年草。「らせん状にねじれた穂状花序をつけ,淡紅色か紅色の小花が下から咲き上がる。ネジバナの名はそこから出ている。(平凡社『俳句歳時記』より)」
雑草である,と言ったら叱られるかもしれないが,種をまいたのではない,もちろん苗を植えたのでもない。あちこちの鉢物にも,庭にもひょっこりと花茎を伸ばす。他の植物といっしょに植えておくと元気に育つ,という性質を持っているそうだ。この時期,我が家の庭には,多くのネジバナをみることができる。
ということは,我が家の庭は雑草園。いや,否定はしない。ネジバナがのびのび育つ環境なのだから。
さてこの花,「モジズリ」という別名をもつ。捩(もじ)れて巻く様子からの命名だと言われるが,。だから女性のなよやかな姿を表しているとか,複雑に悩ましい女心だとか,そう考え勝ちで,しかもそれは昔からそう言われているとか。
『古今和歌集』(恋・4 724)に次の歌がある。
みちのくの しのぶもじずり誰ゆえに 乱れんと思ふ我ならなくに 源融
「【訳】陸奥の信夫で産するしのぶもじずりの模様のようにあなた以外の誰にも心を乱そうとするような私ではないのだから,それをわかっていただきたいのです。(小学館『日本古典文学全集7古今和歌集』より)」
ここで言う「もじずり」は,染めの模様を喩えとしているのであって,決して女性の姿や心を表しているのではない。
もじずり 忍草の葉を布帛にすりつけて,もじれ乱れたような模様を染め出したもの。また,ねじれ乱れたような模様のある石に布をあてて摺りこんで染めたものともいう。(小学館『日本国語大辞典』)
ところでこの花,右巻きか左巻きか。調べてみるとどうも一定しない。「同じ花でも左巻きと右巻きが並んであったりしますので,ねじれる方向は特定できないようです。(西良祐『花を贈る辞典366日』より)」
我が家の,まわりにある花を調べてみると,右巻きのもの1に対して,左巻きのものは7と圧倒的に左巻きが多いが,ねじれていないのが2本ある。一方向に花がついてまっすぐ上がっている。
「ねじれて咲くから『ネジバナ』なのだから,お前はどう見ても『ネジバナ』ではない。」「いや,私は素直なネジバナなのだ。」
などと,今ネジバナ同士言い合っているところかもしれない。
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