そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.349  ルオー展

 名前だけは聞いたことがあるが,どんな画家か,どんな作品があるのか全く知らなかった。しかし,新聞に何度か広告が出るのでなんとなく気になっていた。ちょうど1日空いた日ができてその日の朝,
「『ルオー展』がどこかであるって,新聞に出てたな。」
と,妻に聞くと知らないという。新聞のストッカーをごそごそ探して,やっと見つけた。
「7月19日までだ。ちょうどいい。」
 と,いうことで出かけることにした。思いつきもいいところだ。
 
 ちょうどカーナビを買ったので,その試運転ということもある。島根県立美術館にはこれま2度ばかり行ったが,駐車場が少し離れたところにあり,どの車線を走ればよいか分からず迷ったこともある。
 カーナビは安来あたりからの入り方まで教えてくれたので,「どうしてこんな所から入るの」と無視して松江から入ると,きちんと駐車場まで案内してくれた。さすが。

 フランスの画家ジョルジュ・ルオー(1871〜1958)の「初期から晩年までの油彩約110点,水彩など約30点,版画約80点による質・量ともに最大規模の総計約220点の作品を集め,ルオーの画業を辿ります。(「ルオー展」パンフレットより)」
 ステンドグラス職人の徒弟から出発したという彼の作品は,全体的に黒い線によって縁取られ,絵の具は分厚く,近づきがたいものを感じた。キリスト教の影響を強く受けた作品なので,私にはなかなか理解できないものがある。

「パッション」という言葉が,一連の作品に出てくる。
「トケイソウは英語でパッションフラワーと言う。」
「なぜ。」
「日本では雄しべ・雌しべの形を時計の針に見たててトケイソウと言うんだけど,ヨーロッパでは十字架にかけられたキリストの形に見る。受難 (パッション)の花ということだ。」
 キリスト受難の一連の物語をルオーは版画にしている。

 ルオー晩年の作品にはやわらかさ,やすらぎを感じる作品も多い。「優しい女」(1939)はその代表的な例だろうか。なかなか重厚な展覧会だった。
 これらの多くの作品は,「出光美術館所蔵の作品」という。日本にもすごいコレクターがいるのだ。

 帰り,カーナビの自宅設定ができない。来た道を帰ればいいのだから別に問題はないのだが,とうとう帰り着くまでカーナビは我が家を教えてくれなかった。