そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.35 /入院雑記3 病室から Part1

 入院してもう半月をを越えた。最初の検査の折りに言われた通り,怪我に対する治療はまったくない。ひたすら安静にして過ごす。
 以来天井ばかり見てくらしている。それでも個室だからスペースが広く取ってあり,窓も広い。しかし,ベッドに寝たきりの私には,かぎられた風景しか映らない。5月も中旬に入って,ぐずついた天気が続く。沖縄はすでに梅雨入り。

 ベッドの背中の角度が変わるようになっていて,痛みが薄らぐにしたがって座る姿勢に近づけるようにしなさいと言う。角度を上げると視界が広がる。
   
 テレビの上には
 赤と白のシランが咲いている
 あれは白じゃない 花びらの先がほんのり赤くて
 すべてを赤く染めたいのか 口紅シラン

 切り取られた窓に
 正面には雨に霞む稲葉山
 黒ずんだ瓦 
 墨絵の底に沈む町
 
 雨 時々ツバメ

 見下ろすと
 朝の町並み 
 ベランダに洗濯物
 車が一台駆け抜けていった
 川土手に遊ぶ子どものかげ
 こぼれる笑顔
 かげの向こうに思い出が佇んでいるような

 左に目を移すと
 久松山 あれは 雁金山
 工場の建物 小さなビルの町

 晴れ 時々カラス
                             (2002.5.18)