そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.356  朗読劇

 朗読劇『この子たちの夏』(地人会 木村光一構成・演出)のチケットが手に入ったので見に行くことにした。会場が鹿野小学校の体育館なので,気軽に出かけられる。台風10号が,四国方面には大雨の被害をもたらした。しかし,鳥取県のこの辺りには長い長い風の後に少しばかりの雨を運んできて,また暑い夜を迎えていた。

 鹿野町は町民演劇が盛んである。毎年町民による演劇が公演されている。県民文化会館で広く県民に演劇を見せたこともある。だからこのようにあちこちの演劇や,音楽の公演会を呼んで開催することもできるのだろう。
 体育館の入り口近くで町職員の徳岡さんに会った。彼も演劇活動に熱心な一人だ。
「向こうの前のカーペット席がお勧めですよ。」
と,案内してもらう。座ると隣にこれも町職員の乾さんが見えた。体育館がいっぱいで,熱帯夜が帰ってきたようだ。

『この子たちの夏』は,副題に「1945・ヒロシマ ナガサキ」とあるように,1945年に広島・長崎に投下された原爆の犠牲となった子どもたちとその母の話を朗読劇にしたものである。
「五十九年前の,あの日を綴った子供たちの,そして母親たちの手記,手紙,詩などによって構成された一時間半の舞台」(劇チラシより)。

 出演者は6名。岩本多代 大原ますみ 川口敦子 北村昌子 水原英子 山口果林。
 私の知らない名前もあるが,いずれも結構名の売れた女優。この朗読劇をはじめて20年になるという。そして,広島・長崎の原爆から59年がたった。あの悲劇を決して風化させてはならない,原爆で死んでいった子供たちと残され母の悲しみを忘れてはならない。
 そんな思いや願いが,朗読された。

 さすが俳優,うまい。決してなりきってというではなく,朗読という範囲を越えないで,一人一人の個性を出しながら,読んでいる。「読んでいる」ことと,「演じている」ことのぎりぎりのところだろうか。
 最近子ども達の学習発表会で,「群読」が多くなってきた。「詩」を読み上げることが多い。詩にはリズムがあり,発表会の席などにはぴったりだ。しかし,なぜか一斉読み上げ方が多く,一本調子になりがちだ。そのことが気になっていた。先生方,今回の朗読劇をぜひ参考にしてほしい。

 暑い夏の公演だった。しかし,収穫のある朗読劇だった。