そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.357  イングランド夏紀行1

一 鳥取・羽田・幕張・成田
 1 油断大敵パソコン用心
 還暦を迎えた妻のお祝いに,長男夫婦がイギリス旅行をしようかと言ってきたのは3月頃のことだった。5月の連休に実行のつもりだったが,直前になって都合が悪くなり中止となった。別の旅行でも考えようとしていると,今度は8月に実施したいという。妻も私も仕事がないではないが,何とかやりくりできるだろう。計画はすべて長男に任せて,身の回りの荷物作りだけ準備を進める。
 どんな服装を準備するのか,インターネットでロンドンの天気を調べると,最高気温25℃くらいとか。えっ,ずいぶん涼しいじゃないか。長袖も用意しなくてはならない。ミュージカル観劇なども計画されているからネクタイも必要か。いろいろ考える分荷物が多くなる。私たちの旅行は,これまでトランク一つと手荷物だけで済ましてきた。まあなんとか詰め込んで,一つにまとめる。荷物発送の前日にもう一度ロンドンの天気を見ると31℃。どうなっているのだ。
 この度の旅行はちょっとした滞在型である。ロンドンに6泊7日,ロンドン市内はもちろん,近郊にも足をのばす予定。
 長男はしきりに何か行ってみたい所などはないかと言ってくる。とりあえずミュージカルを見ることを計画に入れているようだし,キューガーデンや大英博物館はどうかと言う。ちょっと忙しくしていて考えるひまもないから「任せるよ」と返事をする。ミュージカルは『オペラ座の怪人』と『ライオンキング』を予定しているからビデオやCDで予習をしておけ,というので,近くの店から借りてきてみる。
 それでもガイドブックを見ていると,「コッツウォルズ一日バス観光」というのが目に付いた。毎日べったりくっついて回らなくても,日本語ガイドもつくということだし,これを希望することにしよう。
 8月に入って準備もほぼ完了,ホームページにも一言「お休み」と書いておこうかというときになって,パソコンにとんでもないトラブルが起きた。メールもホームページも,ワードの書き込みさえできない。パソコンを購入した電気屋さんに見てもらうと,「Cドライブが容量いっぱいになっています」という。応急処置ではどうにもならないようだ。
 パソコンを持ち帰ってもらったが,初期化しなければならないようだ。後にどれくらいの後遺症が残るかわからないがしようがない,任せることにした。そんなわけで,誰にも何の挨拶もなしのまま出発となってしまった。
 私のいない間にパソコンはなんとか復旧できるのだろうか。近所の人には旅行のことは話しているが,挨拶もなく突然留守になり,ホームページの書き込みも止まっている。心配する人もあるかもしれない。なんとなく気がかりなことの多い出発となってしまった。

 2 幕張メッセってどんなとこ?
 今回の海外出発は成田8月7日の午前10時なので,前泊しなければならない。鳥取の旅行業者にも相談して,飛行機・ホテルセットを利用することにした。成田・千葉に適当なところがないので幕張にホテルを取る。
 鳥取・羽田の飛行機の中で,
「羽田から幕張までどうして行くんだったかな。」
「旅行社からもらったバスの時刻表があったじゃない。」
「持ってこなかった。まあ,尋ねたらわかるだろう。」
 国内の事に関しては緊張感がない。しかし,空港内の案内所で聞くとすぐにわかった。
 前回ヨーロッパ旅行(1996.12〜1997.1)のときは成田に前泊した。羽田から成田までのバスが,ずいぶん時間がかかったことを思い出す。今回も都内を抜けるのにかなりの時間を要した。国際空港の多くは,こういう不便さがある。それでも高速に乗ると,スムーズに流れた。前回よりは幾分改善されているのかもしれない。バスとホテルが同じ系列会社なのか,バスはホテル玄関前で停車。明朝もここで乗車すればよい。
 夕食まで時間があるので,少し散歩をすることにした。ホテルの従業員に,
「どこか見るところがありますか。」
と尋ねると,
「そうですね。やはり幕張メッセでしょう。」
「幕張メッセってどんなところですか。」
「今は,恐竜展をやっています。それから,なんとかいう画家の作品展をしています。」
 要するに幕張メッセは大きな催場らしい。恐竜展には興味はないが,ちょっと行ってみるか。ホテルの2階から通路が通じていた。確かに大きな催場である。恐竜展はやっているが,夏休みの子供たちを対象にしたものだろう。入場料を払ってまで見ることはない。「なんとかいう画家」の展覧会はどこだ。広すぎてわからない。全く別の建物にラッセンの作品はあった。ハワイ在住の画家だ。これまでにも本物かどうかは知らない,何度か作品に出会ったような気がする。若者向きかな。さっと見て会場を後にする。
 夕食も外に出て食堂街で取る。多分本格的な日本食とはしばらくお別れだから,寿司でも食べようか。
 夜,長男と明朝のことについて電話。
「ちょっとぎりぎりになるけど,ここを7時05分発,成田8時前着でどうだろう。」
「なんとも言えないからもう一つ前のバスにしてほしい。」
 というわけで,朝5時56分発。実は5時56分から7時05分までシャトルバスがないのだ。荷物はすでに空港まで送ってあるからその点は楽だが,5時起きはつらい。バスは順調に走って6時30分空港着。出発カウンターはがらがらで,店も開いてない。7時に開く店でサンドイッチとコーヒーの簡単な朝食。
 40分にやって来た長男夫婦と荷物の受け取り,イギリスでの携帯電話サービスの手続き,チェックインなどを済ませてちょっと落ち着く。出国手続きまで少しゆっくり。この時期海外旅行で空港もごった返している。