そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.360  イングランド夏紀行5
三 街を歩けば
 2 ティータイム

 チケットの売り出しが12時からだったので,時間待ちの間にティータイムとする。近くのメゾンベルトーという店(写真)は,少しは名前の知られたティー(紅茶)の店らしい。本場のAfternoon Teaは,「ケーキ類のほかにスコーンと呼ばれる素朴な焼き菓子が付き,バターがこってりしたクロテッドクリーム,其の上にジャムをつけて食べる。サンドイッチもハム,キュウリ,スモークサーモンなどが揃い,軽食とあなどるなかれ,ボリューム満点だ。」(前述「地球の歩き方 ヨーロッパ」より)とあるが,ティーはともかく,ケーキなど食事の一部とする習慣は日本にはない。私は少し食べただけ。
 さて,ティーについて。
「最近日本で使われるようになった言葉を借りるならば,ティーこそイギリス人の『ライフライン』,単なる飲み物ではなくて伝統文化の象徴,午後四時ごろにティーを飲むのは咽喉の渇きを癒やすためだけではなくて,生活の中の重要な儀式なのだ。」(小池滋『英国らしさを知る事典』東京堂出版)
 しかし,考えてみると紅茶はイギリス原産の植物ではない。日本の緑茶は産地が国内に多数あって,「茶摘歌」まであるほどなのだが,紅茶の原産地は中国であり,17世紀くらいまではイギリスの高貴の方でもめったにお目にかかれない貴重品であったという。
 したがって,18世紀になっても紅茶は上流社会の飲み物であった。それが今のようにイギリス人一般の食事として定着するのは,インドでの品種発見,生産拡大,農業全般の革命が進められたことによる。また,18世紀末から19世紀にかけて,イギリスで広く進められた大衆に禁酒を奨励する運動が,ティーを酒に代わる健全飲料として奨励されたこともあるという。
 まあ,いろいろあるようだが,日本でいう「おやつ」というよりも中間食のような形で,イギリス人の間に定着していることは確かなようだ。従ってイギリスの食文化を理解しようとするなら,このティータイムを楽しまなければならない。
 ミュージカルのチケットをなんとか手に入れて,時間がかなりある。バッキンガム宮殿に向かう。
 前回バッキンガム宮殿に来たときには中には入らなかった。ここの見所といわれる「衛兵の交代式」を見た記憶がある。「バッキンガム宮殿も,ウィンザー城も人でいっぱいだ」と記録している。