そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.361  イングランド夏紀行6
四 Musicals
1 舞台大国
 ロンドンには100以上もの劇場があるといわれる。東京にいくつあるのか知らないが,世界一流の舞台が毎日楽しめる,という点ではロンドンの右に出られまい。日本で私たちは東京・京都で2・3のミュージカルを見た。いくつかの演劇も見た。この旅行では,まとめて三本のミュージカルを見ることができた。どの劇場も満員だった。私たちのような旅行客ももちろんあるだろうが,イギリス人,ロンドン市民も多いのだろう。ロングランであれば(何年も続けているミュージカルもある),2度3度見る人も多かろう。つまり,ミュージカルファンが多くいる,ということなのだろう。
 さて,残念ながら私には英語の力がない。もちろんここはイギリスだから演劇も英語でやっているわけで,言葉がわからないということは致命的なことに違いない。
 最初のミュージカルは,「SINGIN'IN THE RAIN(雨に唄えば)」。何か聞いたことがあるような感じもする。パンフレットにTHE CLASSIC HOLLYWOOD MUSICALと書いてあるから,ハリウッドの映画史,映画がサイレントからトーキーに変わっていくころの映画作りを劇化したものらしい。ショートコメディーを1本にまとめたもののようだ。
 サドラーズ・ウェルズ・シアターはそんなに大きな劇場ではなかったが,前のよい席で見られてよかった。喜劇なのだからセリフに合わせて笑うべきなのだが,残念ながら言葉がわからないので,動きで判断するしかない。回りの観客より少し遅れて笑いが出る。しかし,面白いものは面白い。雨の中のダンスのシーンはすごい。舞台に雨がザーザー降る中でのダンスである。ほんとうに雨(水)が降ってくる。あれは後始末が大変だろう。
 帰国して,『2001年洋画の旅』(文芸春秋・小林信彦)を見ると,「雨に唄えば」はベスト100の中の57番目に上げられていた。映画としての評価だが,「ドナルド・オコナーの踊りが天才的」とある。妻に言わせると,「タップダンスが出ると思ったのだが」との評価。私はそんなことは知らない。
 少しお腹がすいてきた。考えてみると,昼はケーキを少し食べただけ。ああ,イギリスのティータイムをほんのおやつの時間と考えたのは間違いだった。あのときしっかり食べなきゃならなかったんだ。
 ホテルに帰ってゆったり。日本から持ってきたお粥でも食べるか。イギリス最初の日としては動き過ぎた。妻の万歩計は2万歩を越えていた。